集中治療室におけるメタロ β-ラクタマーゼ産生クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)アウトブレイクからの教訓:リスク期間および併用療法の重要性★

2015.02.27

Lessons from an outbreak of metallo-β-lactamase-producing Klebsiella oxytoca in an intensive care unit: the importance of time at risk and combination therapy


S. Vergara-López*, M.C. Domínguez, M.C. Conejo, Á. Pascual, J. Rodríguez-Baño
*Hospital La Merced, Spain
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 123-131
背景
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)による院内感染のアウトブレイクは、主に Klebsiella 属菌によるものであり、世界的に発生がみられている。
目的
その特性が明確にされているアウトブレイク中の、メタロ β-ラクタマーゼ IMP-8 産生および染色体性 OXY-2 β-ラクタマーゼ過剰産生のクローン性多剤耐性クレブシエラ・オキシトカ(multidrug-resistant Klebsiella oxytoca;MDRKO)感染のリスク因子を調べること、および MDRKO による感染症の臨床的特性について述べること。
方法
スペインの病院の集中治療室で 2009 年から 2011 年に、4 波からなる MDRKO のアウトブレイクが発生した。症例対照研究を実施し、Cox 回帰およびロジスティック回帰分析を用いて、第 1 波および第 2 波の期間中(保菌患者が流行株の主要なリザーバとなった期間)の MDRKO 感染のリスク因子を解析した。また、MDRKO 感染患者の臨床データおよび治療についても分析を行った。
結果
症例 26 例と対照 45 例におけるリスク因子の研究を行った。Cox 回帰分析で評価した因子は、MDRKO 感染との関連が認められなかった。しかし、ロジスティック回帰分析では、リスク期間は MDRKO 感染と関連する唯一の因子であった。保菌圧は、早期感染との関連が認められなかった。全体で、MDRKO 感染患者は 14 例であり、最も頻度の高い感染症のタイプは人工呼吸器関連肺炎(7 例)であった。単剤療法は併用療法と比較して、死亡率が高い傾向が認められた(60%[5 例中 3 例]対 16.6%[6 例中 1 例]、P = 0.07)。
結論
今回の疫学的状況では、リスク期間が CRE 感染の最も重要な決定因子であり、多剤耐性菌感染のリスク因子の研究の対象とするべきである。CRE 感染の治療としては、単剤療法よりも併用療法のほうが優れていると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
この論文においては、CRE 感染は、ICU に在室する = リスクに曝露される期間がリスク因子として有意であった。また、グラム陽性菌においても、グラム陰性菌においても、標準予防策、接触予防策、手指衛生の重要性は同様だということがよくわかった。記述や解析手法が丁寧にまとめられているので、アウトブレイク調査のまとめをするときの参考になると思われた。

監訳者注:
リスク期間(time at risk):本研究での定義は、ICU 入室から症例患者の保菌・感染までの日数、および対照患者の退室または死亡までの日数。

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