2003 年から 2011 年のロンドンの国営医育病院におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症発生率低下のための介入の分析

2015.01.30

Analysis of interventions to reduce the incidence of Clostridium difficile infection at a London teaching hospital trust, 2003‒2011


O. Marufu*, N. Desai, D. Aldred, T. Brown, I. Eltringham
*King’s College Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 38-45
背景
2008 年以降、英国のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)発生率は大きく低下したが、地方および政府の介入がこの低下にどのように寄与したかについては明らかではない。
目的
分割回帰モデルおよび一元配置分散分析(ANOVA)を用いた後向き解析により、病院獲得型 CDI 発生率低下のための介入の効果を評価し、その解析法の意義を明らかにすること。
方法
8 年間にわたって大規模国営医育病院が実施した 28 件の介入の後向き時系列解析。一元配置 ANOVA を用いて、CDI 発生率と、抗菌薬使用状況の変化および手指衛生遵守率データとの関連を分析した。
結果
いくつかの介入は CDI 発生率低下と関連していたが、介入と介入の間のデータ収集ポイントが不十分であったため、全データについて意義のある解釈ができなかった。セファロスポリン系およびキノロン系薬の使用量減少が、CDI 発生率の低下と関連していた。手指衛生遵守率のばらつきと CDI 発生率との間には、ほとんど関連が認められなかった。
結論
いくつかの介入は CDI 発生率の低下と関連していたが、本研究からは、短期間に多数の介入を実施している場合に感染制御策を評価するための手法としては、後向き時系列解析には限界があることが示された。一元配置 ANOVA により、CDI の減少と高リスクの抗菌薬使用の制限との間に関連があることが示された。研究期間を通じて手指衛生遵守率は比較的高かったが、手指衛生の監査により記録された遵守率と CDI との間には関連はほとんど認められなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染管理においては、行う介入を 1 つだけに絞ってその効果をみることは難しく、多くの場合で複数の介入を順次、あるいは同時に行うことが一般的である。したがって有効なアウトカムが得られた場合でも、結局どの介入が有効であったのかはわからないことが多い。本研究は英国における CDI の減少に、何の介入が寄与したのかを明らかにすることを目的とし、限界があることを指摘しつつもセファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬の抗菌薬使用制限と CDI の減少に相関があるとしている。ただ一方で、同期間中にはアモキシシリン・クラブラン酸、ピペラシリン・タゾバクタム、メロペネムの使用量は増えていることにも注意が必要かもしれない。これらは ESBL 産生菌やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の増加に寄与しているかもしれないからである。

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