接触予防策が入院患者の転倒、褥瘡、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)とバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の伝播に及ぼす影響に及ぼす影響
Impact of contact precautions on falls, pressure ulcers and transmission of MRSA and VRE in hospitalized patients
S. Gandra*, C.M. Barysauskas, D.A. Mack, B. Barton, R. Finberg, R.T. Ellison III
*University of Massachusetts Medical School, MA, USA
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 170-176
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の伝播を予防するために、病院は種々の接触予防策を使用している。接触予防策は、隔離患者の安全に悪影響を及ぼす可能性が懸念されている。2010 年 11 月に、大学病院の感染制御方針が変更され、MRSA または VRE の保菌・感染患者(MRSA/VRE 患者)に対する接触予防策が中止となった。
目的
方針変更前後の MRSA/VRE 患者およびその他の内科・外科患者の転倒および褥瘡発生率とともに、MRSA および VRE の伝播状況の変化を評価すること。
方法
2009 年 11 月 1 日から 2011 年 10 月 31 日に、全病院的な単一施設後向きコホート研究を実施した。
結果
MRSA/VRE 患者の転倒および褥瘡発生率は、その他の成人内科・外科患者と比較して、方針変更前(転倒:1,000 患者日あたり 4.57 対 2.04 件、P < 0.0001;褥瘡:1,000 患者日あたり 4.87 対 1.22 件、P < 0.0001)、方針変更後(転倒:1,000 患者日あたり 4.82 対 2.10 件、P < 0.0001;褥瘡:1,000 患者日あたり 4.17 対 1.19 件、P < 0.0001)ともに有意に高かった。MRSA/VRE 患者の転倒および褥瘡発生率は、方針変更前と方針変更後で有意差は認められなかった。全体の MRSA または VRE の病院感染発生率には変化がなかった。
結論
MRSA/VRE 患者は、その他の成人内科・外科患者と比較して転倒および褥瘡発生率が高かった。これらの発生率は接触予防策の有無に影響されなかったことから、これらの合併症にはその他の因子が寄与していると考えられる。この集団の合併症予防には、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ちょっと驚きの論文であるが、そもそもこの病院での接触予防策の徹底そのものに問題があった可能性がありそうだ。詳細な記事記載に欠ける論文で、十分な評価が難しい。
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