鼻腔の光殺菌およびクロルヘキシジンワイプにより手術部位感染が減少する:歴史的対照研究および傾向分析
Nasal photodisinfection and chlorhexidine wipes decrease surgical site infections: a historical control study and propensity analysis
E. Bryce*, T. Wong, L. Forrester, B. Masri, D. Jeske, K. Barr, S. Errico, D. Roscoe
*Vancouver General Hospital, Canada
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 89-95
背景
クロルヘキシジンボディーソープや鼻腔内ムピロシン投与を用いた術前除菌療法により手術部位感染(SSI)が減少し得るが、遵守状況が不良であることが多い。
目的
鼻腔内光殺菌処置とクロルヘキシジンボディーワイプを併用した新しい迅速除菌療法を用い、SSI の減少効果を評価すること。
方法
2011 年 9 月 1 日から 2012 年 8 月 31 日に、心臓外科、整形外科、脊椎外科、血管外科、胸部外科、および脳神経外科の待機的手術患者 3,068 例を対象として、手術 24 時間前にクロルヘキシジン処置を実施し、さらに手術控え室で鼻腔内光殺菌処置を行った。SSI サーベイランス法は前年までと同様とし、患者の追跡を 1 年間行った。それらの結果を、4 年間の歴史的対照群 12,387 例および無処置の同時対照群 206 例の結果と比較した。
結果
処置患者では歴史的対照群と比較して SSI 発生率の有意な低下が認められた(1.6%対 2.7%、P = 0.0004、オッズ比[OR]1.73、95%信頼区間[CI]1.2815 ~ 2.3453)。この有意な低下は intent-to-treat 解析によっても同様に認められた(P = 0.021、OR 1.37、95%CI 1.9476 ~ 1.7854)。全体の除菌療法遵守率は 94%であった。処置患者と無処置患者を 1:4 でマッチさせた傾向スコア分析から、除菌療法は SSI リスクを有意に低下させることが示された(P = 0.00026、z = 3.65)。
結論
手術直前のクロルヘキシジンワイプと光殺菌処置の併用により SSI が減少し、その遵守状況は良好であり、術前のルーチンの処置に容易に組み入れることができた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
鼻腔内光殺菌は、鼻前庭に光感受性のメチレンブルーを塗り、それに光を当てて活性化することで抗菌活性を期待するものである。これまで歯周炎の治療を目的として口腔粘膜に用いられたことがあり、安全性に問題はなかったとされている。今回、鼻腔内光殺菌とクロルヘキシジンワイプの併用で SSI 発生率が低下したことは、鼻腔内保菌を介した伝播の重要性をあらためて強調するものといえる。
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