スイスの病院における 13 年間の手術部位感染サーベイランス★
Thirteen years of surgical site infection surveillance in Swiss hospitals
W. Staszewicz*, M.-C. Eisenring, V. Bettschart, S. Harbarth, N. Troillet
*Geneva University Hospitals, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 40-47
背景
手術部位感染(SSI)予防にはサーベイランスは必須の要素である。そのためのプログラムの長期的な効果を評価した研究はほとんどない。
目的
スイス西部および南部で実施された 13 年間の多施設 SSI サーベイランスプログラムから得られたデータを提示すること。
方法
全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムの方法に従って、退院後の追跡サーベイランスを実施した。SSI 発生率は調査対象手術の種類ごとに算出し、全体およびプログラムへの参加年数別に示した。SSI のリスク因子、および SSI 発生率に対するサーベイランス期間の影響を多重ロジスティック回帰により分析した。
結果
全 SSI 発生率は、結腸切除術(7,411 件)後 18.2%、虫垂切除術(6,383 件)後 6.4%、胆嚢摘出術(7,411 件)後 2.3%、ヘルニア縫合術(9,933 件)後 1.7%、股関節形成術(6,341 件)後 1.6%、膝関節形成術(3,667 件)後 1.3%であった。退院後の SSI 検出率は、結腸切除術の 21%から膝関節形成術の 94%までばらつきがあった。SSI の独立リスク因子は手術によって異なっていた。NNIS リスクインデックスにより SSI が予測できたのは消化管手術のみであった。腹腔鏡手術は、全般的にみると SSI 発生率を低下させる保護的な手技であったが、虫垂切除後の臓器・体腔感染の発生率は高かった。サーベイランスプログラムへの参加期間は、対象としたいずれの手術の SSI 発生率低下とも関連しなかった。
結論
これらのデータは、SSI 発生率に対する退院後サーベイランスの影響および腹腔鏡手術の保護的効果を確証するものである。ケースミックス補正の代替法を確立する必要がある。欧州の他のプログラムとは異なり、SSI 発生率に対するサーベイランス期間による正の影響は認められなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
スイスでの長期にわたる多施設サーベイランスの結果は、わが国での SSI の発生状況とその低下を考えるうえで非常に有用といえよう。腹腔鏡手術が SSI の発生を抑えるインパクトについても具体的に示されたが、虫垂切除後の臓器・体腔感染がむしろ増加したことは興味深い。
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