医学部学生に対する手指衛生の理念教育の促進因子および障壁★
Facilitators and barriers around teaching concepts of hand hygiene to undergraduate medical students
R. Kaur*, H. Razee, H. Seale
*University of New South Wales, Australia
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 28-33
背景
現時点では、医学部学生に手指衛生の理念を教えるために用いられる教育法の影響および適切性を評価した文献はほとんどない。
目的
(i)手指衛生およびその遵守に影響する因子に関する主要な大学教員および医学部学生の見解について、および(ii)医科大学で実施されている手指衛生に関する現行の教育について調査すること。また、手指衛生に関する学生の知識と姿勢の改善に有用な新規教育・学習法の選択肢についても調べることとした。
方法
主要な大学教員と医学部学生を対象として、個別に入念な面接を実施した。速記録の主題分析を行った。
結果
参加者の印象は、学生は手指衛生教育を重視しておらず、また特に医学部のプログラムで学んだ他の教科と比較して面白くないであろうというものであった。教育における主要な推奨事項は、専門家を手本とすること、評価課題(assessment task)、および患者や同僚からのフィードバックであり、これらを実践することによって、手指衛生に対する医学生の姿勢の改善、さらに望むらくは遵守の改善の推進が可能になると考えられる。定期的かつ小規模なグループシナリオ研修や現場での実践的研修も提案された。医学部学生の手指衛生実践の持続を推進するために最も重要な主題は、感染制御に関する文化の変革の必要性であった。
結論
医学部学生の手指衛生行動の改善を推進するためには、評価およびシナリオ学習・教育法を検討すべきである。これらの実践を持続させるためには、役割モデルのほかに、感染制御に関する文化の変革が必要であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療従事者、特に医師の手指衛生遵守率の低さは、医学生にも影響している可能性がある。ゼンメルワイスが 1847 年に医学生の手洗いの不備で産褥熱死亡率が増えていることを指摘して以来、すでに 166 年が経過し、いまだに医学生の手指衛生行動は満足できるレベルには達していない、その原因は理論的教育をしても、その後の実習までに忘れてしまう知識不足、誤解などに加え、「お手本の欠如」は大きい。医学生は指導医の行動を見て学ぶ、いわゆる「猿まね」で臨床現場で学ぶが、彼らが必要だと思っても、指導医が手指衛生を実施していなければ、実際には不要だと思い込んでしまうのである。したがって、実習前に教えられたことと現場でのギャップを感じれば、素直になぜ?と質問するよう指導する必要がある。手指衛生については、医学部と病院の両者が医学生の教育訓練に対する責任をもつべきである。また OSCE にもこれらの手指衛生の項目を入れて、実践教育が必要である。「鉄は熱いにうちに打て!」、そして「手指衛生は若いうちにたたきこめ!」、さもないと手指衛生の遵守率改善は望めないかもしれない。
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