消化器手術施行患者を対象とした手術前後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)スクリーニングの意義★

2014.06.30

Value of pre- and postoperative meticillin-resistant Staphylococcus aureus screening in patients undergoing gastroenterological surgery


Y. Takahashi*, Y. Takesue, M. Uchino, H. Ikeuchi, N. Tomita, T. Hirano, J. Fujimoto
*Hospital of Hyogo College of Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 92-97
背景
術後の感染予防を目的としたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の積極的サーベイランスを支持するデータに関しては、依然として異論がある。
目的
消化器外科手術施行患者を対象とした MRSA スクリーニングの効果について調査すること。
方法
2 つの消化器外科病棟(A 棟と B 棟)で、PCR 法により鼻腔内 MRSA 保菌のスクリーニングを行った。鼻腔内保菌の状態(術前保菌および術後の獲得)ごとに、術後 MRSA 感染の発生を分析した。
結果
術前の MRSA 保菌率は A 棟で 9.7%、B 棟で 4.3%であった(P = 0.009)。術後の鼻腔内 MRSA 獲得は、それぞれ 16.2%、6.0%の患者で確認された(P < 0.001)。いずれの病棟でも、術前の鼻腔内保菌の有無別にみた MRSA 手術部位感染(SSI)発生率に有意差は認められなかった。術後の鼻腔内 MRSA 獲得率が高かった A 棟では、術後の鼻腔内獲得患者の MRSA 感染率は 26.8%であり、これは術前の MRSA 保菌患者、および入院中に保菌のなかった患者と比較して有意に高値であった。術後の鼻腔内 MRSA 獲得は、両病棟で MRSA 感染に関連する独立因子であった(A 棟でのオッズ比[OR]7.192、95%信頼区間[CI]2.981 ~ 17.352、B 棟での OR 5.761、95%CI 1.429 ~ 23.220)。
結論
術前の MRSA 保菌者を対象としたスクリーニング戦略により、MRSA SSI が抑制された。術後の鼻腔内獲得は MRSA 感染に影響を及ぼす有意な因子であり、スクリーニングの効果は病棟での術後の MRSA 獲得率により異なっていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
周術期の MRSA 感染を予防するために、MRSA の新たな伝播・保菌をいかに少なくするかは極めて重要な課題である。本検討は、新規の MRSA の獲得が術後の SSI に結びつく具体的なデータを本邦から示すことができた貴重な報告といえる。アクティブサーベイランス自体の影響や、培養法に比した PCR 法によるスクリーニングのインパクトについてもっと明らかにすることができれば、より現実的な予防法の立案が可能になるであろう。

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