ギリシャ中部のラリッサの改築工事後の内科病棟で発生した免疫不全患者のフザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)血流感染症の集団発生
Cluster of Fusarium verticillioides bloodstream infections among immunocompetent patients in an internal medicine department after reconstruction works in Larissa, Central Greece
S.P. Georgiadou*, A. Velegraki, M. Arabatzis, I. Neonakis, S. Chatzipanagiotou, G.N. Dalekos, E. Petinaki
*University of Thessaly, Greece
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 267-271
背景
フザリウム(Fusarium)属菌は、特に免疫不全患者に播種性の感染症を引き起こすことがある。フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)はヒトの病原体であり、これまではフザリウム症の散発例が報告されている。
目的
改築工事後の免疫不全患者 7 例にみられた F. verticillioides 血流感染症の院内集団発生事例について報告すること。
方法
肉眼的・顕微鏡的形態観察、および分子的手法(核内リボソームの内部転写スペーサー[ITS]領域および翻訳伸長因子[translation elongation factor]-1α 遺伝子のシークエンシング)により菌の同定を行った。米国臨床検査標準化協会(Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI)のガイドラインに基づいて感受性試験を実施した。環境サーベイランス用のサンプルを採取し、サブローデキストロース寒天平板で培養した。
結果
患者 7 例からの合計 16 件の血液培養が F. verticillioides 陽性であった。サーベイランス培養はすべて陰性であった。
結論
真菌症を予防するためには、医療環境での解体・改築工事の実施前、実施中、および実施後に、効果的な感染制御策を実施することが重要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Fusarium 属は土壌や植物に生息する糸状菌で、立枯病や根腐病などの原因となる代表的な植物病原菌である。ヒトにおいては真菌性角膜炎、眼内炎、皮膚・軟部組織感染症を起こすことがあり、白血病やエイズ患者では肺炎や敗血症を起こすこともある。
本論文では免疫正常と考えられる 7 名の患者が工事期間後に Fusarium 属による敗血症を起こし、環境培養では Fusarium 属は検出されなかったことを報告している。
工事におけるアスペルギルス(Aspergillus)属を中心とした真菌感染症のリスクについてはよく知られるようになってきたが、Fusarium 属による感染症は報告されていない。それに加えて免疫抑制状態にない患者がいきなり Fusarium 属による敗血症になることもまれで、さらにそれが 7 名も続けて出たということだが…。
Aspergillus 属に汚染された鎮痛用硬膜外ステロイド薬注射を受けた患者のアスペルギルス髄膜炎のアウトブレイクが米国で問題になったのは記憶に新しいところであるが、本事例についてもまずは輸液の汚染などを考えるのが先では、というのが正直な感想である。
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