急性期病院の 8 病棟におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)による空気および表面の汚染パターン
Air and surface contamination patterns of meticillin-resistant Staphylococcus aureus on eight acute hospital wards
E. Creamer*, A.C. Shore, E.C. Deasy, S. Galvin, A. Dolan, N. Walley, S. McHugh, D. Fitzgerald-Hughes, D.J. Sullivan, R. Cunney, D.C. Coleman, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 201-208
背景
病院の空気および環境表面からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が回収されることがあり、これが患者への伝播リスクとなる可能性がある。
目的
患者および環境からの集中的なサンプル採取を実施し、空気および環境表面から回収された MRSA 分離株と患者から回収された MRSA 分離株との関連について調査すること。
方法
2010 年から 2011 年に 700 床の 3 次ケア病院の 8 病棟において、患者とその環境を対象とした前向き観察研究を実施した。全病室で患者、空気、表面のサンプル採取を実施するとともに、より集中的な環境サンプリングを高度治療室(high-dependency bay)で 1 日の既定の時間に行った。DNA マイクロアレイプロファイリングと spa タイピングにより、分離株の遺伝的関連を明らかにした。
結果
MRSA が回収されたのは、患者 706 例中 30 例(4.3%)、および空気サンプル 132 件中 19 件(14.4%)であった。患者と空気サンプルの両方で MRSA が認められたのは 132 件中 9 件(6.8%)であった。高度治療室で MRSA が回収されたのは、患者 161 例中 12 例(7.4%)、空気サンプル 32 件中 8 件(25%)、および環境表面サンプル 644 件中 21 件(3.3%)であった。MRSA 陽性患者が入室していない病室の空気サンプルから MRSA が分離されたのは、132 件中 10 件(7.6%)であった。患者の人口統計学的データと、spa タイピングおよび DNA マイクロアレイプロファイリングを組み合わせた評価により 4 つの伝播クラスターの存在が示唆され、患者分離株と環境分離株との間に極めて密接な関連があると考えられた。
結論
空気サンプリングからは MRSA が高い頻度で認められ、特に高度治療室で顕著であった。環境および空気サンプリングと、患者の人口統計学的データ、spa タイピング、および DNA マイクロアレイプロファイリングとを組み合わせて評価することによって、クラスターの存在が示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA が空気感染する可能性のある病原体であることは CDC の環境のガイドラインでも指摘されているが、問題はその頻度であろう。そのほとんどは接触伝播による濃厚な菌量の移行に伴うものである。また、こうした常在性のある菌を全く排除することも難しいことから、床などの療養環境は定期的な低水準消毒薬入りの洗浄剤による清掃が適しており、高頻度接触部位については耐性菌に合わせて頻度や使用するケミカルを配慮する必要がある。
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