イタリア中部の血液透析ユニット 8 室における透析用水および透析液中の真菌の存在★★
Occurrence of fungi in dialysis water and dialysate from eight haemodialysis units in central Italy
G.F. Schiavano*, L. Parlani, M. Sisti, G. Sebastianelli, G. Brandi
*University of Urbino ‘Carlo Bo’ Urbino, Italy
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 194-200
背景
透析液の真菌汚染は、特に血液透析患者では免疫系が低下しているため、治療上重大な問題をもたらすことがある。
目的
イタリア中部の地域の血液透析ユニット 8 室において、透析用水および透析液中の真菌の存在、分布、および種類について調査すること。
方法
イタリア腎臓病学会(Italian Society of Nephrology)のガイドラインに従い、1 年間にわたって血液透析回路の様々な部位から検体を採取した。真菌の分離・同定は ISTISAN method Report(2007 年 5 月および 2008 年 10 月)に従った。
結果
分析した 976 検体中 96 検体で糸状菌の増殖が、28 検体で酵母の発育が、6 検体で糸状菌・酵母両方の発育が認められた。糸状菌の菌種は多岐にわたっており、26 属(このうち種のレベルまで同定されたのは 15 種)が含まれ、中には芽胞を観察できず、形態的に菌種を決定できないもの(mycelia sterilia)もあった。これらの多くは日和見病原体として知られているものであった。クラドスポリウム(Cladosporium)属が最も多く認められ(39%)、次いでアルテルナリア(Alternaria)属、トリコフィトン(Tricophyton)属の順であった。処理水および標準透析液の真菌数はいずれも閾値未満(10 cfu/mL 未満)であり、質的にはイタリアのガイドラインに準拠したものであったが、超純粋透析液のサンプルの 10.9%は 1 種類から数種類の真菌に汚染されており、ガイドラインに違反していた。
結論
血液透析回路から種々の日和見真菌が検出されたことから、透析用水、透析液の真菌について微生物学的な分析を行い、確認する重要性が示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
透析液の微生物学的な安全性とその質の担保は、重要かつ普遍的な課題である。これまでにも多くの検討がなされ、国内でも「日本透析医学会:透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準 2008」や「日本臨床工学技師会:透析液清浄化ガイドライン」で透析液中の細菌数およびエンドトキシン値の厳格な管理について目標が定められている。しかしながら真菌についてはこれらでは言及がなく、国際的にも目標を定めている国はまだ少数である。今回の検討は、真菌汚染について従来とは異なった認識をもつ必要性を示している。国内でも真菌汚染に関する研究と対策が進むことを望む。
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