遅発性新生児敗血症、およびそのリスク因子と介入:2006 年から 2011 年のセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)アウトブレイク再発生の分析★★
Late-onset neonatal sepsis, risk factors and interventions: an analysis of recurrent outbreaks of Serratia marcescens, 2006-2011
A. Samuelsson*, B. Isaksson, H. Hanberger, E. Olhager
*Linköping University, Sweden
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 57-63
背景
2006 年から 2011 年に、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)の種々の異なるクローンの伝播による敗血症が 11 例に、保菌が 47 例に認められた。これらのアウトブレイク再発生を受けて、患児間の伝播を制御するための介入が実施された。
目的
S. marcescens 保菌・敗血症の予防のための段階的介入の効果を評価すること、および遅発性敗血症のリスク因子を分析すること。
方法
後向きオープン観察研究により介入の評価を行った。後向き症例対照研究により遅発性敗血症のリスク因子を分析した。
結果
感染予防策を段階的導入後に S. marcescens 敗血症および保菌は減少した。遅発性敗血症のリスク因子として特定されたのは、短い在胎期間、低出生体重、中心静脈カテーテルまたは臍帯カテーテル留置、および人工呼吸器の使用であった。2007 年第 4 四半期から継続的なモニタリングが行われていた唯一の介入は、基本的な感染予防策指針の遵守率であった。遵守率は徐々に上昇し、2009 年初めには高値定常状態に達した。2008 年第 2 四半期以降は、アウトブレイクはみられたが S. marcescens 遅発性敗血症は減少した。2009 年第 1 四半期以降には S. marcescens 保菌が減少した。
結論
各介入に特異的な効果を特定することはできなかったが、病院の抗菌薬使用方針の改定が S. marcescens 遅発性敗血症の発生に影響を及ぼしたと考えられる。S. marcescens 保菌に対する介入の効果が遅延したのは、基本的な感染予防指針の遵守率が徐々に上昇したことからわかるように、新規の日常的業務手順が効果を発揮するまでに時間を要することが原因であると思われる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
分娩 48 時間以降に発生する遅発性敗血症(LOS)は医療施設関連感染(HAI)である。本論文では、5 回の複合的な感染予防策によりセラチア菌による HAI 患者の減少が認められた。介入内容は、手指衛生、個人防御具の使用、病院環境整備、静脈カテーテルの管理、患者の配置など多岐にわたる対策である。さらに、菌交代現象の予防のための抗菌薬適正使用も重要な介入の 1 つである。本論文では、6 年という長期にわたる複合的な感染予防策の実施とその遵守率のモニタリングを行っている点が特徴として挙げられる。アウトブレイクが収束するとともに、介入は終了してしまいがちである。継続した感染予防策遵守状況の把握が、このような集中治療が行われる現場では必要である。ぜひ、本文を読んでいただきたい論文である。
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