基礎疾患の重症度と院内肺炎の転帰:集中治療室における前向きコホート研究★

2014.01.30

Underlying illness severity and outcome of nosocomial pneumonia: prospective cohort study in intensive care unit


B. Guzmán-Herrador*, C. Díaz Molina, M.F. Allam, R. Fernández-Crehuet Navajas
*Reina Sofia University Hospital, Spain
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 53-56
背景
これまでの研究から、院内肺炎患者の最終的な転帰は、集中治療室(ICU)入室時の患者の基礎疾患の重症度に依存する可能性が示唆されている。
目的
成人 ICU に入室中の院内肺炎発症と死亡リスクとの関連を、特に ICU 入室時の基礎疾患の重症度に焦点を当てて評価すること。
方法
2006 年から 2009 年にスペインの基幹大学付属病院 1 施設の ICU に 24 時間以上入室した全患者を対象として、前向きコホート研究を実施した。入室時の患者の基礎疾患の重症度に基づいて、層別化単変量解析を行った。疾患の重症度は Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II スコアを用いて評価した。院内肺炎が ICU での死亡率上昇と独立して関連するかどうかを明らかにするために、想定される交絡因子を補正した多変量ロジスティック回帰分析を行った。
結果
合計 4,427 例を対象とし、このうち 233 例が入室中に院内肺炎を発症した。院内肺炎を発症した患者の死亡リスクは、発症しなかった患者と比較して 2.6 倍高値であった(95%信頼区間 2.1 ~ 3.0)。APACHE II スコアで層別化した評価では、各層で有意な関連が依然として認められたが、スコアが高値であるほど関連の強さは低下した。多変量解析では、院内肺炎は ICU での死亡と独立して関連していた。院内肺炎と APACHE II スコアとの交互作用についても、相関係数が負の有意性が認められた。
結論
ICU 入室中の院内肺炎の発症は死亡率上昇と独立して関連していた。しかし、関連の強さは ICU 入室時の疾患の重症度が高いほど低下し、APACHE II スコアが重度の患者の死亡には影響しなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
とある研究会で、「院内肺炎患者の本当の死因は何だろうか」という話題が出たことがある。その時、「院内肺炎そのもので死亡する、つまり喀痰から何らかの微生物が出続け、肺炎のコントロールがつかずに死亡するケースはそれほどない。やはり基礎疾患の悪化で心肺機能や腎機能のコントロールがつかずに死亡するケースが圧倒的に多い」という意見があった。
本研究は、基礎疾患が重篤な患者では、院内肺炎を発症して死亡した患者の死因は肺炎よりもむしろ基礎疾患によるものだろうと結論づけている。一方で、基礎疾患が軽症の患者の院内肺炎では肺炎そのものが死亡率を増加させる可能性を示しており、その予防と早期診断・治療が重要であることを示唆している。

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