表面のプリオン汚染の洗浄、消毒、および滅菌

2013.12.31

Cleaning, disinfection and sterilization of surface prion contamination


G. McDonnell*, C. Dehen, A. Perrin, V. Thomas, A. Igel-Egalon, P.A. Burke, J.P. Deslys, E. Comoy
*STERIS Corporation, OH, USA
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 268-273
背景
プリオン汚染は医療器材の再処理時のリスクとなるものであり、除去・不活化が困難である。臨床実践での一般的な再処理サイクルにおける洗浄、消毒、および滅菌の併用効果についてはほとんど不明である。
目的
洗浄、消毒、および/または滅菌の併用による表面のプリオン汚染リスクの低下について調査すること。
方法
洗浄単独と、洗浄に加熱消毒および高温/低温滅菌の過程を併用した場合の影響を、in vivo 検査法によって調べた。高力価のスクレイピー感染脳ホモジネートでステンレス製ワイヤーを汚染させる標準的な検査法を用いて、感染性の低下を評価した。
結果
プリオンに対する従来の化学的な表面汚染除去法は有効であることが確認されたが、長時間の高圧蒸気滅菌(18 分)の効果にはばらつきがみられた。通常の曝露時間(4 分)または長時間の曝露による蒸気滅菌単独によってプリオンの汚染リスクは低下したが、大きなばらつきがみられた。これらの検査では加熱消毒の併用効果は認められなかった。特定の製剤、特にアルカリ製剤による洗浄と蒸気滅菌の併用は、効果的なプリオン汚染除去法であると考えられた。低温の過酸化水素ガス滅菌も、洗浄の併用の有無にかかわらず感染性を低下させることが確認された。
結論
プリオン汚染の除去は、汚染表面に対する全再処理サイクルの影響を受ける。本報告でスクレイピーの感染性の検査を行った洗浄法、消毒法、および滅菌法を正しく用いることによって、プリオン汚染に対する標準的予防策がもたらされると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本では、「プリオン病感染予防ガイドライン 2008 年版」により、4 つの処理方法が示されている。2009 年の調査によると、8 割の医療施設が「アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター(WD)洗浄 + 真空脱気プリバキューム式高圧蒸気滅菌 134℃以上、8 ~ 10 分間」を選択すると回答していた(黒田恵ら,医療関連感染 2009;2:44-47)。この論文の結果からは効果的な方法と考えられた。過酸化水素プラズマ滅菌についての評価も含め、ガイドラインの改訂が待ち遠しい。

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