分割分析による手術部位感染の多施設サーベイランス★
Multicentred surgical site infection surveillance using partitioning analysis
Y. Fujiwara*, T. Yamada, Y. Naomoto, T. Yamatsuji, Y. Shirakawa, S. Tanabe, K. Noma, T. Kimura, H. Aoki, H. Matsukawa, M. Kimura, Y. Nonaka, H. Sasaki, T. Onoda, Y. Otawa, M. Takaoka, T. Fukazawa, Y. Ohno, T. Fujiwara
*Okayama University, Japan
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 282-288
背景
手術部位感染(SSI)は、世界中で医療費の増大をもたらしており、公衆衛生上の大きな問題となっている。医師が SSI のデータを継続的に収集・解析して病院の日常診療にフィードバックするうえで役立つ方法を活用することは、日本の国家的最重要事項とされている。
目的
多施設における分割分析を用いた「オペレーションズ・リサーチ※」による介入研究を実施し、SSI の発生率および影響の低減を図ること。
方法
7 施設からなる Setouchi SSI Surveillance Group が、2006 年に SSI サーベイランスを開始した。2008 年 5 月までの 4 つのサーベイランス期間(A ~ D)を設けた。合計 3,089 例の患者に消化管手術を施行し、手術後 30 日間追跡した。SSI との関連が報告されている 26 因子の評価を全患者を対象として評価した。各サーベイランス期間で主要な 3 因子を特定し、その後の各期間のための実践の改善を計画した。
結果
全 SSI 発生率は、期間 A で 6.9%、期間 B で 6.3%、期間 C で 6.4%、期間 D で 3.9%であった。期間 A と期間 D との比較による SSI 発生率の低下は、統計学的に有意であった(P = 0.012)。
結論
臨床実践改善のための行動計画に寄与する積極的 SSI サーベイランスの結果と分割分析の活用は、SSI の大幅な減少に有効であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本の SSI 多施設共同研究の論文である。本論文では、オペレーションズ・リサーチを活用してリスク因子を共通認識するところから取り組みを行い、SSI の発生減少というアウトカムを得た。リスクアセスメントに基づき、いくつかの手技や対策が変更された、という点においても参考になるモデルである。ちなみに、主要な 3 リスク因子は、手術時間、抗菌薬予防投与の方法、年齢であった。
監訳者注:
※オペレーションズ・リサーチ(operations research):意思決定のうえでの問題解決を支援し、また他者に説明するための数学・統計学モデルを用いる理論的手法。電車の乗り換えシステム、授業・施設時間割、銀行の窓口の数を決める、など幅広い分野に応用されている。
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