バンコマイシン耐性腸球菌保菌により末期腎不全の死亡率は上昇しない:症例対照研究
Vancomycin-resistant enterococci colonization does not increase mortality in end-stage kidney failure: a case-control study
S.E. Garner*, K.R. Polkinghorne, D. Kotsanas, P.G. Kerr, T.M. Korman, R.L. Stuart
*Monash Medical Centre, Monash Health, Australia
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 289-296
背景
腎不全患者では、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)保菌が高い頻度で生じる。この患者群に対する VRE 保菌の影響を理解することは、臨床的に極めて有用である。
目的
腎不全患者の VRE 保菌が入院件数、入院期間、および死亡率に影響するかどうかを明らかにすること。
方法
2000 年から 2010 年に、腎透析患者の後向き症例対照研究を実施した。症例は腎代替療法を必要とする VRE 保菌患者 134 例、マッチさせた対照は同一のベースライン特性を有する非保菌患者 137 例とした。症例およびマッチさせた対照の入院件数、入院期間、および死亡率の相違を分析した。
結果
保菌患者と非保菌患者との間に死亡率の差はなかった(ハザード比 1.14、95%信頼区間 0.78 ~ 1.69、P = 0.49)。保菌患者の入院期間は 7.29 日、非保菌患者では 4.14 日であった(P < 0.001)。VRE 保菌患者の入院件数は、対照と比較して有意な差は認められなかった(9.34 対 8.33、P = 0.78)。
結論
VRE 保菌により、腎不全患者の死亡率は上昇しなかったが、入院期間が延長した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
この論文では、VRE 保菌と入院期間の延長の関連が示唆されたが、理由は不明であった。保菌者の定義が保菌と感染の両方を含むものであったことも、一因かと思われた。症例定義や母集団は抄録だけではわかりにくいことが多く、結果だけを拾い上げていると思わぬミスリーディングにつながることを再認識した。
なお、腎代替療法とは、血液透析・腹膜透析・腎移植のことを意味する。
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