サハラ以南のアフリカにおける医療関連感染

2013.12.31

Healthcare-associated infections in sub-Saharan Africa


C. Rothe*, C. Schlaich, S. Thompson
*University of Malawi, Malawi
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 257-267
背景
医療関連感染は、医療によってもたらされる有害な事象として世界中で極めて高い頻度で発生しており、また患者と医療従事者の両者の健康を脅かしている。医療従事者数が逼迫し、市中感染の負荷が大きい、医療資源の乏しい国々では医療関連感染の影響が特に顕著にみられる。
目的
医療関連感染の分布、抗菌薬耐性、職業曝露、および感染予防に関するサハラ以南のアフリカの現状を概観すること。
方法
1995 年から 2013 年に公表された文献、および国や国際機関などの他の情報源からの文献をレビューした。
結果
わずかなデータから、サハラ以南のアフリカに医療関連感染が蔓延していることが示唆され、主要な感染巣は手術部位であった。多剤耐性結核菌の院内伝播と、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)および薬剤耐性腸内細菌科細菌の流行が重大な懸念事項である。医療従事者は、ワクチンによる予防が可能な職業感染リスクに備えたワクチン接種率が低く、職業曝露後の報告率およびその後のヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査の実施率も低い。医療従事者は一般集団と比較して結核のリスクが高い。手指衛生遵守率は地域内で大きなばらつきがある。ワクチン接種プログラムにおける注射の安全性は過去 10 年にわたって改善しており、その主な理由は再使用不能型注射器の導入である。
結論
データは乏しいものの、サハラ以南のアフリカにおける医療関連感染の負荷は大きいと考えられる。感染予防・管理については、ある程度の改善がみられるというエビデンスが存在するが、広範なサーベイランスデータは欠如している。全般的に、感染予防策および職業上の安全性に関する対策が不足している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
様々な限界がある中での医療の現状が浮き彫りになるレビューである。サーベイランスシステムがどの程度実像を把握できているかは不明であるが、サハラ以南諸国で ESBL 産生菌や NDM-1 産生菌が院内感染や市中感染で検出されていた。使用できる抗菌薬が少なく、繰り返し使用される状況も関連があるとされていた。使用可能な抗菌薬の種類と質が気にかかった。

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*King’s College Hospital, UK

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