悪い設計、悪い実践、悪い細菌:集中治療室におけるエリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)アウトブレイクの制御の妨げ
Bad design, bad practices, bad bugs: frustrations in controlling an outbreak of Elizabethkingia meningoseptica in intensive care units
M.N.D. Balm*, S. Salmon, R. Jureen, C. Teo, R. Mahdi, T. Seetoh, J.T.W. Teo, R.T.P. Lin, D.A. Fisher
*National University Hospital, Singapore
Journal of Hospital Infection (2013) 85, 134-140
背景
エリザベトキンギア・メニンゴセプティカ(Elizabethkingia meningoseptica)は、院内環境に適応したグラム陰性桿菌であり、集中治療で一般に使用されている抗菌薬に対する自然耐性を示す。2 つの集中治療室(ICU)で E. meningoseptica 感染症が患者 5 例に発生した際にアウトブレイク調査を開始した。
方法
臨床検査データ、症例検討、ICU のワークフロー分析、および広範囲の環境サンプリングを実施した。Repetitive element palindromic PCR 法により分子タイピングを行った。介入後の追跡研究として環境モニタリングおよび病院職員の介入遵守率を調査した。
結果
臨床検査データから、ICU 患者の E. meningoseptica 保菌・感染率は前年までとの比較で上昇していることが判明した。蛇口の 44%(79 か所中 35 か所)から E. meningoseptica が培養されたが、その他からは検出されなかった。手指洗浄用の流しが、患者の分泌物の処分と再利用可能な患者ケア用品の洗浄に使用されていた。このように誤用されていた流しの汚染率は、誤用されていなかった流しよりも高かった(オッズ比 4.38、95%信頼区間 1.68 ~ 11.39、P = 0.004)。分子タイピングにより、患者の分離菌株のパターンは、手指洗浄用蛇口からのいくつかの分離菌株と同一であることが示された。これらの実践を修正するために緊急の教育プログラムを開始した。蛇口の徹底的な洗浄とエアレーターの交換を行った。症例数は一時的に減少した。環境の追跡的スクリーニングにより蛇口への細菌の再定着が確認され、2 か月後には症例が再発生した。調査により、看護職員の 77.3%(213 名中 163 名)は依然として流しを誤用していることが判明し、その理由は時間的制約や介入の遵守に関連するその他の問題であった。
結論
認められていない実践が、病室の設計が不適切であるために行われることによって、予期できない影響が ICU の患者にもたらされることがある。作業手順の過失は意図せずに患者を危険にさらす恐れがあるため、病室の設計および病院職員のワークフローを患者の安全のために最適なものとする必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染対策を考えるときに、構造を変える、システム(仕組み)を変える、運用を変える、という 3 つの方法がある。この論文では、ICU ユニット内の手洗い流しが汚物の廃棄や汚染器具の洗浄に使用されていた。本来、構造や、あるいは器具洗浄の仕組みを見直すべきところを運用で対応しようとした結果、教育を行っても 8 割近くの職員が遵守できなかった、という内容である。ここには、感染対策担当者は、感染対策上の問題を解決するためには「構造・仕組み・運用」を意識した介入が必要であるという学びがある。
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