オーストラリア北部熱帯地方の入院患者における市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌

2013.03.30

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in hospitalized patients in tropical northern Australia


L. Brennan*, R.A. Lilliebridge, A.C. Cheng, P.M. Giffard, B.J. Currie, S.Y.C. Tong
*Menzies School of Health Research, Australia
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 205-211
背景
地方のオーストラリア先住民居住地域から、市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus;CA-MRSA)が初めて報告された。これはオーストラリア北部で優勢な臨床病原体であり、病院環境内で伝播している可能性がある。
目的
Royal Darwin Hospital 内の黄色ブドウ球菌保菌の疫学的特性を明らかにすること。
方法
入院後 48 時間以内に登録した「入院直後の患者群」と入院後 5 日以降に登録した「入院患者群」の 2 群の患者を対象として、スクリーニングを実施した。黄色ブドウ球菌分離株の特性を抗菌薬感受性試験により評価し、複数部位塩基配列タイピング(MLST)に基づく高解像度融解曲線解析法により遺伝子型判定を行った。
結果
黄色ブドウ球菌保菌率は入院直後の患者群 225 例では 30.7%、入院患者群 201 例では 34.8%、MRSA 保菌率はそれぞれ 2.2%、18.9%であった。CA-MRSA は入院直後の患者群の 0.9%、入院患者群の 10.4%から分離され、医療関連(HCA)-MRSA はそれぞれ 1.3%、9.0%から分離された。入院患者群で最も多くみられた MRSA 株は、病院感染型 ST239 であった。入院直後の患者群で多くみられた CA-MRSA の clonal complex(CC)は 1 種類(CC5)、入院患者群では 7 種類(CC1、93、5、6、30、75、88)であった。
結論
入院患者に複数の CA-MRSA 株の保菌が認められたことから、病院内では典型的な HCA-MRSA 株だけでなく、多様な CA-MRSA 株についても選択圧が働いており、また伝播が生じていることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MLST は国や地域の MRSA 流行株の特徴をとらえるのによく使用されている。最近では施設内感染に関与するタイプの型や clonal complex も明らかになりつつある。

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