医療環境における真菌生菌の迅速定量法:固相サイトメトリーを用いた空気サンプルおよび表面サンプルの分析
Rapid quantification of viable fungi in hospital environments: analysis of air and surface samples using solid-phase cytometry
D. Méheust*, P. Le Cann, J.-P. Gangneux
*EHESP, Sorbonne Paris Cité ,France
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 122-126
背景
免疫抑制患者の真菌感染の防止には、病院の高リスク区域での環境サーベランスが重要である。環境中の真菌数を定量化するには、従来の培養法は時間を要する。
目的
この実地調査では、病院の空気サンプルと表面サンプルの真菌汚染の定量化を、固相サイトメトリー法と従来の培養法で比較した。
方法
空気サンプルの採取にあたっては病院内の 4 か所の採取場所で、液体サイクロンエアサンプラーを流量 300 L/分、10 分間の条件で使用した。表面サンプルの採取は 2 か所の採取場所で、2 種類の異なるスワブを用いて行った。いずれの区域から採取したサンプルも、固相サイトメトリー法および麦芽エキス寒天培地での培養により処理した。
結果
固相サイトメトリー法で特定した空気サンプル中の真菌生菌平均濃度は、培養法による平均濃度の約 1.5 倍であった。病院環境の 3 か所の空気サンプルでは、この差は統計学的に有意であった。表面サンプルでは、2 種類のスワブの間、また 2 種類の分析法の間で有意差は認められなった。固相サイトメトリー法の明確な長所の 1 つは、培養法と比較して迅速であることであった(5 時間対 5 日)。
結論
本研究から、固相サイトメトリーにより病院環境中の真菌生菌の迅速なモニタリングが可能となることが示された。したがって、固相サイトメトリーを用いることにより早期に警告を発し、早急に是正策を実施することができる。真菌生菌の検出は、免疫抑制患者が滞在する病棟での感染リスクの重要な評価法であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療施設の建築・改修・工事に伴う塵埃の発生は、特に免疫が低下している患者にとってアスペルギルス属に代表される真菌感染症発症の危険性につながるものであり、その対策は極めて重要である。米国では、infection control risk assessment(ICRA)と呼ばれるリスクアセスメントツールを用いて事前に作業内容のリスクを評価し、必要な対策を決定する仕組みが取り入れられている。この論文で検討されているような当日中に結果がわかる検査法があれば、環境の封じ込めなどの対策が機能しているかどうかの評価に役立つと思われるが、実施には必要となる費用も考慮が必要であろう。
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