フィンランドのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の 2008 年から 2010 年にかけての減少
Reduction in Clostridium difficile infections in Finland, 2008-2010
M. Kanerva*, S. Mentula, A. Virolainen-Julkunen, T. Kärki, T. Möttönen, O. Lyytikäinen and the Hospital Infection Surveillance Team
*National Institute for Health and Welfare (THL), Finland
Journal of Hospital Infection (2013) 83, 127-131
背景
フィンランド全国感染症登録(Finnish National Infectious Disease Register;NIDR)および、またフィンランド病院感染プログラム(Finnish Hospital Infection Programme;SIRO)によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)入院患者を対象とした強化サーベイランスの一環として、2008 年 1 月に臨床検査に基づく C. difficile サーベイランスが開始された。
目的
初期 3 年間のデータを提示すること。
方法
すべての臨床検査機関が便検体の毒素産生性 C. difficile 陽性症例を NIDR に報告した。CDI、CDI の由来、および重症例の定義は欧州疾病予防管理センター(ECDC)の暫定的な定義を使用して、CDI 入院患者のサーベイランスを実施した。2008 年から 2010 年にかけて、保健行政区 21 区のうち 10 区の急性期病院の合計 16 施設が SIRO に参加した。臨床微生物学検査室に、重症例から採取した分離株および持続的なアウトブレイク時に採取した分離株を、遺伝子型判定のために国内の標準検査施設に送付するよう依頼した。
結果
CDI の年間発生率は、2008 年の地域住民 100,000 人あたり 119 例から 2010 年の 90 例へ 24%減少した。保健行政区 21 区のうち 13 区(62%)で減少が認められた(行政区ごとの減少率の範囲は 2%から 51%)。院内感染率は、1,000 患者日あたり 0.31 例から 0.23 例へ 26%減少した。SIRO に参加する約半分の病院で減少が認められた。2008 年から 2010 年にかけて、保健行政区 17 区が遺伝子型判定のために C. difficile 検体を送付した。行政区 8 区からリボタイプ 027 が検出され、これらの行政区はいずれも地域住民の CDI 発生率が平均値を超えるか、期間中に増加していた。
結論
地域住民対象の CDI サーベイランスおよび院内感染症例の強化サーベイランスによって CDI は減少していることが示されたが、CDI 制御の成果には地域によりばらつきがみられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
C. difficile 感染症は、欧米では、疫学情報や遺伝子疫学情報を集約するためのサーベイランスが構築され、解析が進んでいる。抗菌薬使用後の発生よりも市中感染や医療関連感染が問題となっており、経済的負担も課題であることが、本論文や EU については ECDC のレポートで取り上げられている。日本にも対策のための現状を把握する仕組みの構築が求められる。
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