病院環境の微生物モニタリング:目的と方法

2012.11.30

Microbial monitoring of the hospital environment: why and how?


S. Galvin*, A. Dolan, O. Cahill, S. Daniels, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2012) 82, 143-151
背景
患者周囲の無生物環境を対象とした微生物モニタリングの目的は、衛生基準のモニタリングと、アウトブレイクの発生源となり得る特定の院内病原体の有無の調査の 2 つであると考えられる。目的がいずれの場合であっても日常的な微生物培養を行うが、最適な結果を得るためにはそれぞれの方法が異なる場合がある。この 2 つの目的にみられる主な相違点は、衛生状態の評価においては微生物の定量化が必要であり、さらに特定の環境表面部位で好気性菌コロニー数を測定する必要があるが、感染制御サーベイランスにおいては多剤耐性院内病原体を検出する方法に簡便性が求められることである。
目的
無生物の臨床環境から院内病原菌を検出するために、調査研究およびアウトブレイク調査で用いられている現行の方法を評価すること。
方法
PubMed で公表文献の検索を行った。
結果
環境中の微生物モニタリングには、スワブ、スポンジ、接触平板培地、およびディップスライド法が、種々の増菌培地および選択培地と組み合わせて用いられている。PCR 法などの分子生物学的方法により検査時間の短縮を図ることによって、感染予防・感染制御のための清拭・消毒レジメンのより迅速な実施が可能となる。しかし、微生物学的な衛生状態の評価方法や、特定の病原細菌の最適な検出方法については、広範な同意は得られていない。
結論
最適な方法、環境サンプリングの頻度、および医療施設環境の表面汚染の許容レベルの基準について、意見の一致が求められる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
環境検査は日常的に行うべきものと、アウトブレイク時などに行うべきものがある。国や地域により問題となる病原菌が異なる場合もあり、指標の作成には様々な配慮が必要となる。また経済的な配慮も重要である。特定細菌や特定耐性菌の検出においては検査業務負荷や検出効率も大きく変動する。

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