クロルヘキシジングルコン酸塩を用いる水洗いをしない皮膚洗浄による多剤耐性菌医療関連感染および菌定着予防効果:システマティックレビュー

2012.10.31

Impact of non-rinse skin cleansing with chlorhexidine gluconate on prevention of healthcare-associated infections and colonization with multi-resistant organisms: a systematic review


S. Karki*, A.C. Cheng
*Monash University, Australia
Journal of Hospital Infection (2012) 82, 71-84
背景
患者の皮膚上の細菌密度を減少させるために、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)の局所使用が行われている。
目的
CHG 含浸・浸漬布を用いる清拭または皮膚洗浄による医療関連感染ならびに菌定着予防効果を評価すること。
方法
論文発表されているランダム化対照試験、クロスオーバー試験、コホート研究、および前後比較研究を本システマティックレビューの対象とした。CHG 含浸布の使用を、石けんと水による清拭、各病院の通常の介入、または介入なしのいずれかと比較している試験を対象とした。
結果
論文発表された 16 件の研究と学会抄録 4 件が、本システマティックレビューの対象となった。このうち 9 件では中心ライン関連血流感染(CLABSI)の発生率に対する CHG の効果を報告しており、発生率比(IRR)は 0.43(95%信頼区間[CI]0.26 ~ 0.71)であった。5 件の研究では手術部位感染(SSI)の発生率に対する CHG 含浸布の効果を評価しており、相対リスクは 0.29(95%CI 0.17 ~ 0.49)であった。4 件の研究ではバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)定着に対する効果を報告しており、IRR は 0.43(95%CI 0.32 ~ 0.59)であった。3 件の研究ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)定着率に対する効果を報告しており、IRR は 0.48(95%CI 0.24 ~ 0.95)であった。6 件の研究では VRE 感染に対する効果を報告しており、IRR は 0.90(95%CI 0.42 ~ 1.93)であった。6 件の研究では MRSA 感染に対する効果を報告しており、IRR は 0.82(95%CI 0.51 ~ 1.30)であった。アシネトバクター感染発生率を報告している 3 件の研究では、発生率の低下は認めらなかった。
結論
これらの結果から、CHG を用いる水洗いをしない洗浄によって、CLABSI、SSI、VRE 定着、および MRSA 定着のリスクは有意に低下するが、感染のリスクは低下しないことが示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
米国では、2%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を含有したアルコールを含まない単包のウエットタイプの布が発売されている。このメタアナリスでは、主にこの製剤の SSI、CLABSI、MRSA や VRE の定着や感染に対する有効性が検討された。定着のリスク、つまり感染の防止に対して有効を示したものの、感染のリスクは低下させなかったことは感染成立には皮膚の消毒では回避できない因子が存在することを考えると納得できる結果である。気になるのは副作用である。このメタアナリシスで採用された論文では、継続使用により皮膚にアレルギー反応がみられたものの、重篤なものは報告されていないが、小児への連続使用により、血中に低濃度の CHG が探知されたとの報告が含まれていた。

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*Pfizer Inc., USA

Journal of Hospital Infection (2021) 108, 146-157

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