模擬手術条件下でのスクラブ法と擦式法を併用した 3 種類のレジメンの持続的抗菌効果および残留抗菌効果の in vivo 評価

2012.08.31

In vivo evaluation of the persistant and residual antimicrobial properties of three hand-scrub and hand-rub regimes in a simulated surgical environment


C.M. Beausoleil*, D.S. Paulson, A. Bogert, G.S. Lewis
*BioScience Laboratories, Inc., USA
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 283-287
背景
術前の手指消毒用抗菌製剤の使用によって手術部位感染の発生率が減少することが示されている。このような製剤は、手指の微生物叢を即時的に減少させる効果が手袋装着中も持続する必要がある。
目的
本研究では、手術時に使用されている 3 種類の手指洗浄手順をシミュレーションし、その持続的抗菌効果と残留抗菌効果を比較した。手指洗浄手順の 1 つは、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)含有製剤を用いてスクラブ法、次いで擦式法を実施するものであり、2 つはクレンジングソープによるスクラブ法の後に 2 種類のアルコール製剤のいずれかによる擦式法を行うものとした。
方法
本試験は 2 期に分けて実施した。第 1 期では、ボランティアの手指の常在微生物叢に対する持続的抗菌効果を評価した。第 2 期には、ボランティアの手指に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 6538)を接種し、残留抗菌効果を評価した。
結果
第 1 期の試験では、CHG 製剤によるスクラブ法の後にアルコール/CHG 含有製剤による擦式法を行うほうが、石けんによるスクラブ法の後にいずれかの擦式法を行うよりも、常在細菌叢の有意な減少が持続することが示された(P ≦ 0.00)。第 2 期にはすべてのプロトコールで、CHG 製剤によるスクラブ法後のアルコール/CHG 含有製剤による擦式法により、石けんによるスクラブ法後のいずれかの擦式法と比較して、黄色ブドウ球菌数が有意に減少した(P ≦ 0.00)。
結論
CHG およびアルコールを含有する製剤を用いたスクラブ法と擦式法の併用により、常在細菌叢および手術用手袋内の皮膚を汚染する一過性細菌のいずれもが、有意かつ持続的に減少することが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
医療現場においては、いかに有効な手指消毒薬を適切に配置しても、適切な使用が実行されなければ、期待する結果を得ることはできない。現場のジレンマである。
監訳者注:
本論文の著者の所属施設である BioScience Laboratories は臨床試験の第三者評価機関であり、FDA の手指衛生認証基準である TFM のデータ作成受注を手がけている米国最大手の企業である。データの信頼性は高い。

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*Hospital Universitario Virgen Macarena, Spain

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