早期発症人工呼吸器関連肺炎におけるプロカルシトニン
Procalcitonin in early onset ventilator-associated pneumonia
U. Zielińska-Borkowska*, T. Skirecki, M. Złotorowicz, B. Czarnocka
*Professor Orłowski Hospital, Poland
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 92-97
背景
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は集中治療における重大な問題であり、適切なバイオマーカーが強く求められている。プロカルシトニン(PCT)がマーカー候補として提案されている。
目的
VAP を早期発症した非外科患者に対する PCT 濃度モニタリングの臨床的有用性を評価すること。
方法
早期発症 VAP(定義は、人工呼吸器の装着後 48 時間 から 6 日で発症し、診断された VAP)患者 34 例を登録した。血清 PCT レベルを 1、2、3、5、6、および 7 日目に測定した。
結果
死亡率は 21%であった。非生存者では、3 および 7 日目の PCT レベルが有意に上昇していた。非生存者の PCT の受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、3 日目 0.762(95%信頼区間[CI] 0.6 ~ 0.923)、7 日目 0.754(95%CI 0.586 ~ 0.922)であった。敗血症患者では、PCT は 1、2、3、5、および 7 日目に有意に高く、AUC は 1 日目が最大(0.783、95%CI 0.626 ~ 0.94)であった。1 日目のカットオフ値を 1 ng/mL とした場合の敗血症性ショック発症の陽性適中率は 0.813 であった。
結論
PCT 濃度と抗菌薬療法の妥当性または VAP の原因菌との間に関連は認められなかった。ロジスティック回帰分析から、PCT と不良な転帰との有意な相関はみられなかった。非生存者および敗血症性ショック発症患者のほうが PCT レベルが高かったが、PCT はこれらの転帰の強力な予測因子ではない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
PCT はカルシトニンの前駆物質であり、細菌や真菌による感染症では、炎症性サイトカインの刺激により全身の臓器で PCT が産生されることから、細菌感染症のマーカーとしての有用性が多くの論文で検討されている。この論文では、PCT が VAP の診断や予後の予測に使えるかを検討したが、近年の他の感染症における検討と同様に、明確な相関は期待できなかった。
同カテゴリの記事
Investigation of nasal meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in a haemodialysis clinic in Japan
Risk factors for surgical site infection in children at the teaching hospital Gabriel Touré, Bamako
Complex design of surgical instruments as barrier for cleaning effectiveness, favouring biofilm formation
Reducing needlestick injuries through safety-engineered devices: results of a Japanese multi-centre study
Characteristics of respiratory outbreaks in care homes during four influenza seasons, 2011-2015