トルコにおける検査室内感染ブルセラ症

2012.04.29

Laboratory-acquired brucellosis in Turkey


S. Sayin-Kutlu*, M. Kutlu, O. Ergonul, S. Akalin, T. Guven, Y.Z. Demiroglu, O. Acicbe, M. Akova Occupational Infectious Diseases Study Group
*Pamukkale University, Faculty of Medicine, Turkey
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 326-330
背景
検査室の医療従事者は、検査室内感染ブルセラ症のリスクを有している。
目的
医療従事者の検査室内感染ブルセラ症のリスク因子を明らかにすること。
方法
トルコの 17 地域の 38 病院で、直接面接による多施設調査研究を実施した。感染症クリニックおよび微生物部門に勤務する、Brucella 属菌感染のリスクを有する医療従事者に対して構造化質問票に基づく調査を実施した。
結果
調査の回答率は 100%であった。検査室の職員 667 名中 38 名(5.8%)に検査室内感染ブルセラ症の既往があった。多変量解析では、検査室関連ブルセラ症のリスクが高いことと関連する独立因子は、Brucella 属菌の取り扱い作業(オッズ比[OR] 5.12、95%信頼区間[CI] 2.28 ~ 11.52、P < 0.001)、および男性であること(OR 2.14、95%CI 1.02 ~ 4.45、P = 0.042)であった。防御効果が認められたのは、レベル 2 の安全キャビネットの使用(OR 0.13、95%CI 0.03 ~ 0.60、P = 0.009)、手袋使用の完全な遵守(OR 0.27、95%CI 0.11 ~ 0.65、P = 0.004)、および長期の現職歴(OR 0.86、95%CI 0.80 ~ 0.92、P < 0.001)であった。
結論
Brucella 属菌の取り扱い作業、男性であること、個人防護具使用の遵守不良、および安全キャビネットの不使用が、本研究の検査室内感染ブルセラ症の独立リスク因子であった。個人防護具使用の遵守向上および安全キャビネットの使用を、検査室内感染ブルセラ症の予防のための優先的な目標とすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
Brucella 属菌の感染経路は主に 3 つと考えられており、第 1 は汚染されたミルクやチーズなどの飲食、第 2 は吸引、第 3 は皮膚の創傷や眼粘膜からの侵入である。実験室においては、手袋と安全キャビネットの使用がこの第 2、第 3 の経路を遮断するのに有用であるが、いずれも、適正な使用を担保する必要がある。
安全キャビネットは、外部からの異物の混入を防ぐために内部が陽圧となっているクリーンベンチと異なり、内部を陰圧にすることで作業者を曝露から守るとともに、内部の空気を HEPA フィルタを通じて循環させることで、試料の汚染も防ぐ構造となっている。気流を乱すと十分な機能が発揮できないため、正しい使用方法を理解することが求められる。

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