メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の自宅での除菌の実践に関するスコットランドの横断研究

2012.02.28

Cross-sectional survey of meticillin-resistant Staphylococcus aureus home-based decolonization practices in Scotland


K. Currie*, L. Cuthbertson, L. Price, J. Reilly
*Glasgow Caledonian University, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 80, 140-143
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の除菌の有効性に関するエビデンスはわずかであるが、入院前の患者と入院中の患者のいずれに対しても除菌が実施される例が増えている。全国保健サービス(NHS)スコットランドの最近の調査では、自宅での除菌実施率は低く、その有効性も低いことが判明した。現時点では自宅での除菌に関する国のガイドラインは存在しないため、NHS スコットランド内での実践にはばらつきがあると考えられる。
目的
NHS スコットランドにおける現行の入院前の自宅での MRSA 除菌プロトコールおよび患者への指導内容を明らかにすること。ばらつきの原因を推定するために、類似点と相違点を特定した。
方法
NHS スコットランドの各地域の MRSA スクリーニングプロジェクトの管理者(15 名)を対象として、電子的な調査法による横断研究を実施した。
結果
NHS の 15 地域のうち 13 地域から回答を得た。このうち 1 地域は、標準的なプロトコールを使用していないと報告した。残る 12 地域はすべて、連日 5 日間のムピロシンと抗菌ボディソープの使用を推奨しており、これは回答があった地域で一致がみられた唯一の実践内容であった。ムピロシンの塗布方法、および推奨されるボディソープの製品と使用量に関する指導にはばらつきがみられた。6 地域(50%)はボディソープの皮膚への接触時間を規定していたが、その時間は地域によって様々であった。口腔ケアを奨励していたのは 3 地域(25%)であった。洗顔タオルと衣類を毎日交換することを支持していたのは 5 地域(41.7%)、タオルを毎日交換することを奨励していたのは 4 地域(33.3%)であった。寝室を毎日清掃することを支持していたのは 1 地域(8.3%)のみであったが、シーツを毎日交換するように指導していたのは 3 地域(25%)であった。
結論
プロトコールおよび患者への指導のばらつきは、自宅での除菌の有効性に影響を及ぼしていると考えられる。さらなる研究により、エビデンスに基づく臨床ガイドラインを作成するうえで有用な情報が得られると思われる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
スコットランドにおける入院前の自宅での MRSA 除菌方法について各地域の状況を調査したものである。地域で実施される内容にはばらつきが見られたが、それによる除菌の有用性やあるいは、ムピロシン耐性などのアウトカムや評価については言及されていない。

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