黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)鼻腔内保菌後の感染:大学の医療施設における迅速なリスク層別化法
Staphylococcus aureus infection following nasal colonization: an approach to rapid risk stratification in a university healthcare system
U. Seybold*, S. Schubert, J.R. Bogner, M. Hogardt
*Ludwig-Maximilians-Universität, Germany
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 297-301
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の保菌は感染リスクを上昇させる。この関連についての効果修飾因子を明らかにするために、黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌成人患者の人口統計学的および微生物学的データを分析した。黄色ブドウ球菌の臨床培養陽性の予測因子を、二値変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いた症例対照研究により特定した。2005 年 1 月 1 日から 2009 年 4 月 1 日に、黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌を認め、追跡記録を 90 日以上有する患者 645 例を特定し、このうち 159 例(25%)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)であった。患者の年齢中央値は 58 歳であり、421 例(65%)が男性であった。90 日の追跡期間中に臨床培養による黄色ブドウ球菌陽性が 1 回以上認められた患者は 131 例(20%)であった。多変量解析から、何らかの黄色ブドウ球菌の培養陽性歴(補正オッズ比[aOR]2.4、95%信頼区間[CI]1.5 ~ 3.8、P = 0.0005)が、保菌後の黄色ブドウ球菌感染の独立予測因子として特定された。MRSA 保菌は、年齢 > 40 歳の患者(aOR 2.5、95%CI 1.4 ~ 4.1、P = 0.0004)における感染の予測因子であり、年齢 ≦ 40 歳の患者(aOR 12.4、95%CI 3.0 ~ 51、P = 0.0005)ではさらに強い予測因子であった。年齢 > 40歳であることは、メチシリン感性黄色ブドウ球菌保菌の付加的独立リスク因子であったが(aOR 3.0、95%CI 1.2 ~ 7.8、P = 0.02)、MRSA 保菌の独立リスク因子ではなかった。MRSA 保菌とその後の感染リスクが高い患者がスクリーニング対象であったこと、および除菌に関する包括的な方針が欠如していたことが、この患者集団の黄色ブドウ球菌感染リスクが相対的に高かった理由の一部であると考えられる。MRSA 保菌者および繰り返し黄色ブドウ球菌培養陽性を認める高齢患者では、日常的な除菌策が極めて有効である可能性がある。
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