臨床医への予防可能因子のフィードバックにより院内発症黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症発生率が減少し得る★

2011.10.30

Feedback to clinicians on preventable factors can reduce hospital onset Staphylococcus aureus bacteraemia rates


J. Kok*, M.V. O’Sullivan, G.L. Gilbert
*Westmead Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 108-114
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)は重大な疾患や死亡を引き起こすが、予防可能因子についてのデータは少ない。本研究の目的は、3 次病院 1 施設で SAB 事象を評価すること、SAB 事象が回避可能であった場合の予防可能因子を特定すること、および治療を担当した臨床医にフィードバックを行うことである。19 か月間に SAB 事象が 187 件発生し、このうち原因はメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)59.9%、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)40.1%であり、医療関連感染は 65.8%、市中獲得感染は 34.2%であった。全体で 7 日死亡率は 11.2%、30 日死亡率は 20.9%であった。1 つ以上の予防可能因子が特定された医療関連 SAB 事象は 50.4%であった。予防可能因子としては、最近の MRSA 院内獲得が MRSA 菌血症事象の 53.7%に認められ、静脈アクセスに関連する 1 つ以上の因子が医療関連感染症例の 24.3%以上(院内発症例の 35.7%)に認められた。特定可能な 1 つ以上の予防可能因子と関連する SAB の割合は、外科入院患者のほうが内科入院患者よりも高かった(86.2%対 54.5%、P = 0.004)。集中治療室への入室を要する患者の割合は、医療関連 MRSA 菌血症のほうが医療関連 MSSA 菌血症よりも高かった(44.4%対 18.8%、P = 0.003)。予防可能因子を特定し、対策を実施することにより、医療資源をより効果的に SAB 予防に使用できると考えられる。予防可能因子のフィードバックと医療関連 SAB 発生率の減少との関連が認められ、1,000 床日あたりの発生率は 2008 年の 0.29 件からから 2009 年の 0.20 件に減少した。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

黄色ブドウ球菌菌血症の院内発生に関して、予防可能な因子があればそれを同定し、臨床へフィードバックすることによって、これを減少させた取り組みである。予防可能な因子に関する解析を含めた研究的側面と、菌血症の減少という実践報告の双方の側面をもった論文である。フィードバックの手法が参考になる。

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