ブラジルのアウトブレイクの原因菌としてのバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の変異

2011.09.30

Changes in vancomycin-resistant Enterococcus faecium causing outbreaks in Brazil


I.C.V. Palazzo*, A. Pitondo-Silva, C.E. Levy, A.L. da Costa Darini
*Universidade de Sao Paulo, Brazil
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 70-74
腸球菌は、毒力に関連する因子や抗菌薬耐性のために、ヒトに重症感染症をもたらす。世界各地のアウトブレイクに関連しているバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の多くは clonal complex 17 (CC17)に属している。しかしブラジルでは、これまでに報告されたアウトブレイクに関与したバンコマイシン耐性 E. faecium の多くは CC17 には属していない。本研究では、ブラジルのカンピナス市内の病院で感染症アウトブレイクおよび散発例の原因菌となったバンコマイシン耐性 E. faecium 株を、国内のその他のバンコマイシン耐性 E. faecium 株と比較した。E. faecium 23 株中 22 株はバンコマイシン耐性であり、vanA 遺伝子を保有していた。バンコマイシン感性 E. faecium 1 株も、この菌株が分離された患者から 1 週間後にバンコマイシン耐性 E. faecium 株が検出されたため、本研究の対象とした。バンコマイシン感性株を除く全菌株の VanA エレメントに、トランスポゾン左端の欠失、および vanS 遺伝子と vanH 遺伝子間への IS1251 の挿入という同一の変異が認められた。本研究の対象としたバンコマイシン耐性 E. faecium とバンコマイシン感性 E. faecium から、コラーゲン接着蛋白、腸球菌表面蛋白、およびヒアルロニダーゼなどの毒力因子をコードする遺伝子が検出された。パルスフィールド・ゲル電気泳動および複数部位塩基配列タイピング(MLST)法のいずれからも、バンコマイシン耐性 E. faecium 株とバンコマイシン感性 E. faecium 株との間のクローン関係が示された。MLST 法により、新規の遺伝子配列型(ST)として ST447、ST448、ST478、および ST412 が特定されたが、いずれも CC17 に属していた。本研究から、ブラジルのバンコマイシン耐性 E. faecium によるアウトブレイクは、共通の進化過程をもたない菌株が原因となっており、他国と同様に CC17 に属するバンコマイシン耐性 E. faecium 株が主として関与していると考えられた。

サマリー原文(英語)はこちら

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