一般外科手術における感染予防:外科医に対する外科医による教育を通しての改善

2011.08.30

Preventing infection in general surgery: improvements through education of surgeons by surgeons


S.M. McHugh*, M.A. Corrigan, B.D. Dimitrov, S. Cowman, S. Tierney, A.D.K. Hill, H. Humphreys
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 312-316
外科患者は、特定の医療関連感染リスク、すなわち手術部位からの手術部位感染(SSI)、および血管内アクセスを必要とすることに起因するカテーテル関連血流感染のリスクを有する。2 年間にわたる取り組みを開始し、まず外科実務の監査を行った。外科医がこの監査から得られたデータを用いて、特に外科研修医を対象とした目的を定めた教育的取り組みを策定した。初回監査時および教育的取り組み実施後の監査時に、パラメータとして術中・術後のSSI予防に関する項目、および外科患者の末梢静脈カテーテルのケアに関する項目の評価を行った。手術 360 件の術前予防的抗菌薬投与施行率は、初回監査時の 30.0%から教育的介入後の監査時の 59.1%に上昇した(P < 0.001)。手術部位のドレッシングは 234 例に実施され、術後 48 時間以内にドレッシングが交換された割合は、介入後のほうが有意に低かった(16.5%対 6.2%、P = 0.030)。この 2 年間で評価の対象となった末梢静脈カテーテルは合計 574 件であった。不必要な末梢静脈カテーテル留置(37.9%対 24.4%、P < 0.001)、72 時間を超える末梢静脈カテーテル留置(10.6%対 3.1%、P < 0.001)、および清浄かつ正常なドレッシングによる末梢静脈カテーテルの被覆(87.3%対 97.6%、P < 0.001)の割合には改善がみられた。外科医のために外科医が開発した、的を絞った教育的プログラムにより、SSI およびカテーテル関連血流感染の予防のための外科実務の大幅な改善が実現した。外科実務における感染予防のさらなる改善のためには、このほかにも特定の手法が必要であると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

外科医は外科医の言うことであれば聞く傾向にあり、その点でこの取り組みは比較的受け入れられやすかったものと思われる。一方で、日本ではほぼ 100%の症例で行われていると思われる術前予防的抗菌薬施行率の低さ(介入後も)や、これらのプロセスの改善が SSI やカテーテル関連血流感染の低減につながったかどうかを検証するためのサーベイランスが行われていないなど、本研究が実施された医療機関の感染対策に関するレベルが少々気になるところではある。

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