変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法を用いた医療環境表面のブドウ球菌汚染の検出と分類★
Detection and differentiation of staphylococcal contamination of clinical surfaces using denaturing gradient gel electrophoresis
I.I. Kassem*, M.A. Esseili, V. Sigler
*University of Toledo, Ohio, USA
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 187-193
リスクが高い患者の環境からのブドウ球菌属の検出と同定は、病院感染症における環境の役割を明らかにするうえで重要なステップである。ブドウ球菌属の同定に使用される現行の方法は、その性能に限界があり、高価であり、煩雑であるなどの問題がある。著者らは、伸長因子 Tu をコードする遺伝子(tuf)の種特異的多型を利用して、ブドウ球菌属の検出・同定のための変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)解析プロトコールを作成した。27 種の異なるブドウ球菌の純粋培養から分離した DNA のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)-DGGE 解析によってプロトコールを最適化した。この結果、PCR 産物は 19 種類のバンドに分離され、これには黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(S. hominis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(S. lugdunensis)、スタフィロコッカス・ワーネリ(S. warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(S. capitis)、スタフィロコッカス・カプレ(S. caprae)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(S. saprophyticus)などの重要な菌種に固有のバンドが含まれていた。この方法の有用性について、患者が入室している隔離病室の環境表面 15 か所を対象として、定期清掃の前後のスワブ採取により検証した。伸長因子 Tu 遺伝子 tuf の PCR-DGGE 解析により、環境表面は清掃にもかかわらず黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、S. lugdunensis、S. hominis、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(S. haemolyticus)、スタフィロコッカス・シムランス(S. simulans)などの複数種類のブドウ球菌属による汚染が残存していることが示された。結論として、tuf の DGGE 解析は、医療環境における複数種のブドウ球菌群の検出、特性評価、およびモニタリングのための手法として有望である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)は、電気泳動ゲル(通常はポリアクリルアミドゲル)に DNA 変性剤である尿素とホルマリンの濃度勾配を作製して、DNA は変性しやすさに差異があり、部分的に 1 本鎖となった変性 DNA は極端に電気泳動速度が遅くなる性質があることを利用している。DGGE では、DNA の分子量による泳動距離の差異だけでなく、さらに高い分離能が得られる。分離能の高さから、複数種の微生物群を対象としたメタゲノム解析にも利用されることがあり、環境に存在する多数の微生物種を培養することなく一斉に検出する手法の 1 つとなっている。
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