アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の環境疫学および臨床疫学:前向きサーベイランス研究からのデータ
Environmental and clinical epidemiology of Aspergillus terreus: data from a prospective surveillance study
M.J.G.T. Ruping*, S. Gerlach, G. Fischer, C. Lass-Florl, M. Hellmich, J.J. Vehreschild, O.A. Cornely
*University of Cologne, Germany
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 226-230
アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)はアムホテリシン B 耐性を示す場合があり、免疫不全患者の重大な合併症の罹患および死亡の原因となる。その局所的な環境中の発生率は、Aspergillus 属菌の空中浮遊胞子の濃度の影響を受けるが、これは気象因子に関連していると考えられる。ドイツのケルン大学病院の内外から環境サンプルを週 1 回前向きに採取し、血液内科部門の患者を対象として Aspergillus 属菌の鼻腔内保菌のスクリーニングを行うとともに侵襲性真菌症のモニタリングを実施した。すべての A. terreus 分離株に対して、RAPD (rapid amplification of polymorphic DNA)-PCR 法およびアムホテリシン B 感受性試験を実施した。合計 4,919 コロニー形成単位(cfu)を分離した(院内 2,212 cfu、院外 2,707 cfu)。詳細な同定により、アスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)(73.5%)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)(4.3%)、アスペルギルス・フラーブス(A. flavus)(1.7%)、A. terreus (0.2%)、および Aspergillus 属菌以外の糸状菌(20.3%)が認められた。RAPD-PCR 法では A. terreus 分離株間のクローン関連性は示されなかった。すべての A. terreus 分離株がアムホテリシン B 完全耐性※を示した。ケルン大学病院内外の Aspergillus 属菌の胞子量は 6 月に最も少なく、11 月に最も多かった。胞子量は季節および相対湿度と関連し、乾期にはその数が増加した。鼻腔内スワブ 855 件中 1 件が A. niger 陽性であったが、この患者は侵襲性真菌症を発症しなかった。A. terreus はケルン大学病院では重大な病原体ではないと考えられる。RAPD-PCR 法の結果からは、各菌株には疫学的に大きなばらつきがあり、共通の汚染源はないことが示唆された。Aspergillus 属菌保菌の早期検出を目的とした鼻腔内スワブによる監視培養は、侵襲性真菌症の可能性のある患者の特定に有用ではなかった。ケルン大学病院の侵襲性真菌症のリスクは、秋および乾期に上昇すると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
免疫不全患者における真菌対策は極めて重要であり、ことに工事中におけるシールドや作業員の管理が重要である。本研究では気候要因についても明らかにしている。
監訳者注:
※完全耐性(complete resistance):MIC > 2 mg/mL。
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