院内感染によるコストの推計のための種々の解析法:システマティックレビュー★
Variations in analytical methodology for estimating costs of hospital-acquired infections: a systematic review
H. Fukuda*, J. Lee, Y. Imanaka
*Institute for Health Economics and Policy, Japan
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 93-105
費用対効果に優れた感染制御対策を策定するためには、院内感染による追加コストを算出することが不可欠である。このようなコスト推計法には、ケースレビュー、変数をマッチさせた比較、回帰分析などがある。どのコスト推計法を選択するかにより推計値の精度に影響を与えると考えられるが、回帰分析では一般に、その他の手法にみられる選択バイアスを回避することが可能である。本研究の目的は、院内感染による追加コストの推計を実施している研究の発表論文を対象として、コスト推計法の使用状況と傾向を明らかにすることである。MEDLINE を利用し、院内感染によるコストの推計を実施している 1980 年から 2006 年にピアレビュー誌に掲載された論文を系統的に検索した。推計法の 10 年ごとの変遷を Fisher の正確確率検定を用いて解析した。院内感染によるコストの推計に使用された手法で最も頻度が高いものは多変数をマッチさせた比較(59.6%)であり、次いで回帰モデル(25.8%)とケースレビュー(7.9%)であった。1980 年代、1990 年代、および 2000 年以降にわたって、回帰モデルを用いた研究は有意に増加し、変数をマッチさせた比較は減少した(P = 0.033)。院内感染によるコストの推計には、近年は回帰分析が用いられる頻度が高くなっているが、現在も半数以上は変数をマッチさせた比較が使用されている。研究者は解析法に関して、より高い見識をもつべきであり、さらに精度の高い推計法を明らかにするためには比較分析が必要である。本総説は解析専門家を対象として、院内感染によるコストの推計のための既存の種々の手法について、その使用状況、傾向、および利点と欠点を概説する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療関連感染のコスト推計やその分析は、医療関連感染対策に費やすことのできる費用と関連があり、重要な分野である。本論文は、その推計や分析の手法に関して、最近の論文で見られる研究の傾向を分析しており、興味深い。ただし、筆者らは本論文について解析専門家向けであるとしており、この分野に興味のある方には一読をお勧めする。
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