プリオン病と、軟性内視鏡の再処理に推奨される手順:世界的な方針のレビューと簡素化アプローチの提案★

2020.01.31

Prion disease and recommended procedures for flexible endoscope reprocessing – a review of policies worldwide and proposal for a simplified approach


G. Kampf*, M. Jung, M. Suchomel, P. Saliou, H. Griffiths, M.C. Vos
*University Medicine Greifswald, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 92-110
いくつかのガイドラインでは、クロイツフェルト・ヤコブ病または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の疑い例または確診例について、内視鏡に対する特別な処理、専用使用あるいは内視鏡洗浄・消毒装置の追加処理を推奨しているが、推奨の細部については大きなばらつきがある。そこで本研究では、プリオン病の疑い例または確診例における軟性内視鏡使用後の再処理に関するガイドラインについてレビューを行った。さらに、プリオン、クロイツフェルト・ヤコブ病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、化学的不活化、伝播/医療、疫学/医療、濃度/組織/ヒト、および内視鏡に関する文献について、Medline 検索を実施した。これまでに、軟性内視鏡を介して伝播されたクロイツフェルト・ヤコブ病または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の症例は報告されていない。動物実験では、伝播が発生するためには、牛海綿状脳症(BSE)に感染した脳のホモジネート 0.1 ~ 5 g の経口摂取が必要であることが示されている。他の組織(例、回腸末端部)の場合、プリオンの最大濃度は少なくとも 100 倍低い。内視鏡の自動洗浄のみで、十二指腸内視鏡当たりの総残存蛋白量は 5.6 mg 以下と極めて低くなる。国によって推奨にはばらつきがあり、場合によって洗浄を追加する、アルカリ洗浄剤を使用する、固定性のある洗浄剤を使用しない、固定性のない消毒薬を使用するか単回使用用の消毒薬を使用する、などとなっている。水酸化ナトリウム(1 M)および次亜塩素酸ナトリウム(10,000 および 25,000 mg/L)は、動物の脳内に埋め込んだ汚染ワイヤを介した伝播の予防において極めて効果が高いが、内視鏡に関する有効性には疑問がある。間接的なエビデンスに基づくと、遅れて疑いが判明した患者において、使用直後のベッドサイドでの洗浄や、アルカリ洗浄剤のルーチンの使用、消毒前のいかなる段階でも固定性のある洗浄剤を用いないこと、およびシングルユースのブラシと洗浄液の使用を確実に行うことは、適切度に応じて妥当性が確認された再処理法として考慮してよいであろう。
サマリーの原文(英語)はこちら
監訳者コメント
クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い例で使用する内視鏡の洗浄・消毒に関してはエビデンスが少なく、さらにそのエビデンスをどのように総括・理解するか迷うことも多い。散発的に報告される情報を随時総括していくことも手間がかかる。本レビューはそのような総合的な理解に役立つものであり、随時参照する文献としておきたい。

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