イングランドの 2004 年から 2005 年のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)菌血症患者の死亡率
Mortality in patients with meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia, England 2004-2005
T.L. Lamagni*, N. Potz, D. Powell, R. Pebody, J. Wilson, G. Duckworth
*Health Protection Agency Centre for Infections, UK
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 16-20
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症と診断されたイングランドの患者の短期死亡リスクを明らかにするため、地域住民対象研究を実施した。2004 年から 2005 年にイングランドで実施した定期的サーベイランスで血液培養が MRSA 陽性であった患者全員を、国内死亡の登録と照合した。血液培養により MRSA 陽性と診断されてから 7 日以内の全死亡率(全原因死)は 20% であり、30 日以内の死亡率は 38% に増加した。死亡リスクが最も高いのは、血液採取の翌日であった(4%)。7 日以内の死亡率は女性のほうが男性よりも 16% 高かったが(オッズ比 1.16、95% 信頼区間 1.04 ~ 1.29)、30 日以内では有意差は認められなかった。死亡リスクは年齢の上昇とともに増加し、85 歳以上の患者の 7 日以内の死亡率は 28%(1,513 例中 425 例)、30 日以内の死亡率は 57%(1,513 例中 859 例)であった。死亡率には季節性がみられ、冬季が最も高く、夏季は最も低かった。一般集団と比較した場合の 1 週以内の年齢調整死亡率比は、男性 180 倍、女性 225 倍であった。この比率は 10 週目以降に急速に低下し、男女ともに約 9 倍となった。2004 年と 2005 年の MRSA 菌血症発症後の推定死亡率は人口 100,000 人あたり 5.53 人であったが、本研究では MRSA 菌血症との因果関係やこれに起因する死亡率の推測はできなかった。10 週目以降の死亡リスクが一般集団との比較で一定して増加していたことは、その背景に MRSA 感染とは関連しない死亡リスクが存在することを示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA 保菌者の発症率は健常人に比べて高く、保菌そのものが問題である。本データは MRSA 保菌から発症までに関するリスクの紹介となる。
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