イタリアにおける感染予防制圧の進歩:全国的調査 ★

2011.01.31

Progress in infection prevention and control in Italy: a nationwide survey


M.L. Moro*, M. Marchi, R. Buttazzi, S. Nascetti on behalf of the INF-OSS Project Group
*Agenzia Sanitaria e Sociale Regionale Emilia-Romagna, Italy
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 52-57
イタリアにおける感染予防制圧プログラムの普及状態および特性を明らかにするとともに、その近年の進歩を評価することを目的として全国的調査を実施した。小規模な 1 州を除くすべての地域が参加して、回答率は 88% であった。回答した 278 の公衆衛生トラストのほとんどすべてが感染対策委員会を設置しており、回答した 615 病院の 80% が感染制御チームを組織し、79% は感染管理看護師が在籍すると報告した。しかし、実際の感染制御チームの活動状況を検討すると、その実態は一様ではなく、月に 1 回以上のミーティングを開催する感染制御チームは 27% のみであり、地域格差が極めて大きかった[変動係数(CV)1.06]。感染予防制圧プログラムで地域格差が大きい特性項目は、有資格看護師(CV 1.55)および感染制御担当医師(CV 1.39)の存在、感染予防制圧活動と臨床リスク管理の統合(CV 1.05)、地域活動までも対象とする感染予防制圧プログラム(CV 0.98)、就職時の職員教育(CV 0.82)、多剤耐性微生物の制圧に関する文書化された管理方針の存在(CV 1.08)であった。重要かつ統計学的に有意な南北地域差が認められ、南部は北部と比較して感染予防制圧スコアが平均で 23 ポイントも低かった。2000 年に実施された同様の調査と比較すると、いくつかの項目に関しては地域単位での普及状態が有意に改善していた。注目すべき経時的改善がみられたものの、感染予防制圧の組織およびイニシアチブの確立状況が地域ごと、病院の種類ごとに大きく異なることから、イタリアの現状は依然として十分なものではない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ヨーロッパでは医療関連感染予防制圧のための推奨事項が議論されており(Council of the European Union. Council Recommendation on Patient Safety, including the Prevention and Control of Healthcare Associated Infections, 2947th Employment, Social Policy, Health and Consumer Affairs. Council Meeting Luxembourg, 9 June, 2009)、イタリアでも 1985 年および 2000 年に制定された医療法で感染予防制圧とサーベイランスについて推奨が与えられているが、まだ改善の余地があることが全国調査により示されたとする報告である。議論されるポイント(有資格看護師や感染制御担当医師の配備、感染予防制圧活動と臨床リスク管理の統合、地域活動までも対象とする感染予防制圧プログラム、就職時の職員教育、多剤耐性微生物の制圧に関する文書化された管理方針の存在)はいずこも同じである。

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