鼻腔内の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のニッチ(生態的地位)としての毛包:より効果的な除菌方法が必要か?★

2010.11.30

Hair follicles as a niche of Staphylococcus aureus in the nose; is a more effective decolonisation strategy needed?


N.J.P. ten Broeke-Smits*, J.A. Kummer, R.L.A.W. Bleys, A.C. Fluit, C.H.E. Boel
*University Medical Center Utrecht, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2010) 76,211-214
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は手術部位感染症における主要な起因菌であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は感染症の原因として世界的にも増加している。保菌患者のスクリーニングや除菌により手術部位感染症を予防することで感染件数は減少するが、リスクが完全に消失するわけではない。予防、費用、およびムピロシン耐性黄色ブドウ球菌出現の可能性のバランスを評価し、最適な除菌法を実施する必要がある。保菌中の黄色ブドウ球菌の存在部位を知ることは必須である。今回の研究では、組織学的手法を用いてヒトの鼻腔内の黄色ブドウ球菌の正確な存在部位を初めて明らかにした。著者らは、鼻前庭の扁平上皮角化層、そこから派生する角化上皮・粘液剥屑物、および毛包内に黄色ブドウ球菌が認められることを見いだした。毛包内に黄色ブドウ球菌が存在することは、黄色ブドウ球菌が毛包にニッチ(生態的地位)を築いており、除菌後にここから再発する可能性があることを示唆している。除菌方法の再検討が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
鼻腔内投与による除菌に頻用されるムピロシンに対してMRSAが耐性を獲得することは極めて重大な問題であるが、一般的な鼻前庭への塗布だけでは毛包に潜むMRSAに確実な効果を上げることは難しいかもしれない。この論文ではMRSAのムピロシン耐性獲得との関連は明らかではないが、ルーチンで無批判な乱用によるムピロシン耐性MRSAの蔓延はいずれにせよ避けなければならない。

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