完全静脈栄養法を実施している患者のカテーテル関連血流感染の診断:培養陽性中心静脈カテーテル抜去後の敗血症患者の解熱の診断基準への組み入れ★
Diagnosis of catheter-related bloodstream infection in a total parenteral nutrition population: inclusion of sepsis defervescence after removal of culture-positive central venous catheter
C.M. Walshe*, K.S. Boner, J. Bourke, R. Hone, D. Phelan
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 119-123
培養陽性の中心静脈カテーテル(CVC)抜去後に敗血症患者の解熱がみられた場合は、たとえ血液培養が陽性ではなくても、カテーテル関連血流感染(CRBSI)と診断することが提唱されている。しかし大半の研究では、血液培養とCVC先端部の培養がいずれも陽性の場合(標準的定義)のみをCRBSIとして、その発生率を報告している。著者らは、解熱による基準を組み入れることによる、完全静脈栄養法(TPN)を実施している患者集団のCRBSI発生率への影響を調べた。本研究は525床の3次紹介病院で12年間実施した。標準的定義(CVC先端部の培養および血液培養が陽性)を用いた場合と、「解熱による基準」を組み入れた場合のCRBSI発生率を比較した。敗血症患者の解熱の定義は、CVC先端部培養陽性、血液培養陰性で、CVC抜去後に体温の低下、白血球数の減少、および敗血症の症状の消失がみられることとした。血液培養を実施しなかったCRBSI事象は除外した。研究対象集団は1,365例であり、これらの患者は15,234 CVC日にわたり2,536本のCVCを使用した。165例に192件のCRBSIエピソードが発生した。CRBSIの標準的基準のみに合致した事象は全体で152件、解熱による基準に合致した事象は40件であった。標準的定義のみを用いた場合の平均(± SD)発生率は1,000 CVC日あたり10.6 ± 5.8件であり、解熱による基準を組み入れた場合の発生率は1,000 CVC日あたり13 ± 6.4件に上昇した。解熱による基準を含めることにより、CRBSI発生率は1,000 CVC日あたり平均2.5 ± 1.4件、すなわち27%上昇した(95%CI 1.61~3.339、P < 0.001)。本研究から、CRBSIの規模は現在認識されているより大きいと考えられること、およびCRBSIの血液培養陽性率は79%(152/192)であることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
血液培養陽性はBSI判定の標準的事項であるが、その感度は必ずしも十分とはいえない。一方、抜去したCVC先端部から検出される細菌は、抜去時に付着したコンタミネーションである可能性もあり、その解釈には慎重を期する必要がある。アメリカのサーベイランスシステムNHSNではこのほどカテーテル関連BSIの判定基準から臨床的敗血症、すなわち血液培養陰性だが抜去後解熱やカテ先陽性など臨床的にカテーテル関連BSIと考えられる病態を外した。本研究はその妥当性に疑問を投げかける研究であり、一読をお勧めする。
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