入院患者の隔離の有害な影響:システマティックレビュー★

2010.10.30

Adverse effects of isolation in hospitalised patients: a systematic review


C. Abad*, A. Fearday, N. Safdar
*University of Wisconsin Medical School, Wisconsin, USA
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 97-102
医療施設では、多剤耐性菌の保菌・感染が判明している患者に対して接触隔離などの感染予防策を適用することが推奨されている。接触隔離は感染制御に不可欠であるが、近年は患者への悪影響が指摘されている。接触隔離が患者の心理的・身体的問題の原因となるかどうかを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。対象とした研究は、(1)入院患者が医学的適応を有しているために隔離予防策の対象となっているもの、または(2)隔離に関連する何らかの有害事象を評価しているものである。隔離が患者の心理的健康状態、満足感、安全、または医療従事者が直接的な患者のケアに費やす時間に及ぼす影響についてのデータを報告している16件の研究が、選択基準に合致した。大半の研究では、隔離患者は抑うつ、不安、怒りのスコアが高いなど、患者の心理的健康状態および行動に対する負の影響が示されていた。また一部の研究では、医療従事者が隔離患者に費やす時間は通常より少ないことが判明した。患者が自分が受ける医療について知らされていない場合は、隔離は患者の満足感に悪影響を及ぼしていた。患者の安全も隔離によって負の影響を受け、支持療法の無効に関連する有害事象の発現が8倍増加した。接触隔離が患者ケアの様々な面に負の影響を及ぼす可能性があることが判明した。これらの結果をさらに調査するためには、十分に検証された手法が必要である。隔離の悪影響を評価するには、多くの安全性指標を評価する大規模な研究が必要となる。隔離による心理的悪影響の軽減には患者教育が重要なステップであると考えられ、その実施が推奨される。
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監訳者コメント
接触予防策のための個室隔離をはじめとする隔離予防策は、感染制御上必要な事項ではあるが、その実施にあたっては感染制御的側面とその他の患者ケアへの影響への側面を総合的に勘案する必要がある。本論文はそのための理論的根拠となる研究を検索し、まとめたものであるが、概して根拠が明確とはいえない。さらに研究が必要な分野であるといえる。

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