長期ケア施設に入居する高齢者における胃腸炎発生率の評価
Assessing the incidence of gastroenteritis among elderly people living in long term care facilities
M.D. Kirk*, G.V. Hall, M.G.K. Veitch, N. Becker
*Australian National University, Australia
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 12-17
文献のシステマティックレビューおよびメタアナリシスにより、公表されている感染症サーベイランスの報告から長期ケア施設の入居者における胃腸炎発生率を推計した。キーワードとして「長期ケア施設(long-term care facility)」、「ナーシングホーム(nursing home)」、「胃腸炎(gastroenteritis)」、「サーベイランス(surveillance)」、「発生率(incidence)」を用いてPubMed、Web of Science、およびGoogle Scholarを検索した。さらに、各論文に掲載されている文献リストのマニュアル検索を行った。サーベイランス中の胃腸炎症例数および病床使用日数(床・日)を記録して発生率を算出するとともに、ランダム効果を組み入れたメタアナリシスおよび回帰分析により試験実施国および症例定義の影響を評価した。この解析では1件の介入試験と14件のサーベイランス試験を対象とし、このうち47%(15件中7件)は1995年以降に実施された試験であった。1件の試験は入居者の胃腸炎のみに焦点を当てており、これ以外の試験は種々の感染症を対象としていた。サーベイランス中の合計2,071,330床・日に717例の胃腸炎が発生した。これらのうち194例は、それぞれの試験中に発生した10件のアウトブレイクに関連していた。試験間に不均一性が認められたが、これは報告されていない胃腸炎症例の集団発生があったためと考えられる。長期ケア施設入居者の胃腸炎の平均発生率は1,000床・日あたり0.40エピソード(95%信頼区間0.27~0.56)であった。米国の試験を実施した研究者らが報告した発生率は、米国以外の研究者らの報告の3分の1であった。長期ケア施設専用に開発した症例定義を使用しても、胃腸炎発生率は上昇しなかった。解析の結果、入居者には5年から10年ごとに1回、胃腸炎が発生すると考えられ、この率は点有病率調査による推計値よりも低い。長期ケア施設入居者の胃腸炎発生率および原因をより正確に評価するためには、今後の研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
長期ケア施設における各種感染症の持ち込みは、今後の検討課題である。
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