カンジダ血症発生率の上昇:オーストラリア・クイーンズランド州における1999年から2008年の長期的疫学動向★

2010.09.30

Increasing incidence of Candidaemia: long-term epidemiological trends, Queensland, Australia, 1999窶・008


E.G. Playford*, G.R. Nimmob, M. Tilse, T.C. Sorrell
*Princess Alexandra Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2010) 76, 46-51
カンジダ血症は疫学的にばらつきがあり、経時的データが比較的不足していることから、1999年から2008年の期間にわたりオーストラリア・クイーンズランド州のすべての公的医療施設を対象として検査室ベースの受動的サーベイランスを実施して、カンジダ血症の疫学評価を行った。適切な評価尺度(入院患者数およびのべ患者・日数を分母とする)を用いたカンジダ血症発生のすべてのエピソードについて人口統計的・細菌学的データを、検査および管理情報システムから収集した。1999年から2008年に発生したエピソードは1,137件(全発生率はのべ10,000患者・日数あたり0.45 件)であり、発生率はこの期間に3.5倍に増加した(傾向検定P < 0.0001)。教科書的にリスクが高いとされる病棟で発生したカンジダ血症の経時的エピソード数は、減少(血液腫瘍科および小児科病棟)または一定(集中治療室)であった。成人内科病棟および成人外科病棟のエピソード数は経時的に有意に増加し、2008年には合計件数の60%を占めていた。起因菌の相対的な割合は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が減少して、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)は増加した(いずれもP < 0.01)。フルコナゾール耐性分離株の割合には変化はみられなかった。教科書的にリスクが高いとされる病棟以外でカンジダ血症の発生率が上昇したこと、およびC. parapsilosisが増加したことから、予防・早期介入戦略に新たな課題が生じていることが示唆される。
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監訳者コメント
カンジダ属(Candida spp.)は最も代表的な酵母真菌であり、医療関連感染症、特に中心静脈カテーテル関連血流感染症の起因菌として最も多く分離される。臨床的に最も高頻度に分離されるのはカンジダ・アルビカンス(C. albicans)であり、その病原性も最も強いとされる。次いでカンジダ・トロピカーリス(C. tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(C. glabrata)、カンジダ・パラシローシス(C. parapsilosis)、さらにはカンジダ・クルーゼイ(C. krusei)、カンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae)、カンジダ・ケフィール(C. kefyr)、カンジダ・ギリエルモンディ(C. guilliermondii)、などがある。特にC. parapsilosisは経静脈栄養管理(total parenteral nutrition;TPN)、いわゆる高カロリー輸液管理との強い関連が認められる。なお、フルコナゾールが予防的投与された場合、フルコナゾール耐性であるC. glabrataC. kruseiなどによる感染症のリスクが増加すると考えられる。中心静脈カテーテル管理などの侵襲的な医療処置が増加しており、医療関連カンジダ症については今後もさらなる注意が必要である。

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