香港の病院の医療従事者・補助職員による感染制御の実践

2010.08.31

Infection control practices among hospital health and support workers in Hong Kong


J.P.C. Chau*, D.R. Thompson, D.T.F. Lee, S. Twinn
*Chinese University of Hong Kong, Hong Kong SAR, China
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 299-303
香港政府の報告書は、病院の感染制御基準は不適切であり、その監査、策定、および実施が必要であると指摘している。また、病院職員には感染制御対策に関する教育が必要であるとしている。急性期ケア病院1施設およびリハビリテーション病院2施設の医療従事者162名(看護師109名、医師45名、セラピスト8名)と補助職員44名を対象として、感染制御の実践についての調査を非盲検の観察的デザインにより実施した。さらに、マスク、ゴーグル・フェイスシールド、およびガウンの適切な着用、患者のケア用機器、リネン、および洗濯物の取り扱い、ルーチンの清掃および最終清掃、隔離室の最終清掃などの、隔離予防策と感染制御ガイドラインの遵守状況を評価した。主要な不遵守の1つとして、血液・体液の飛散や噴出が生じやすい処置時に、長袖のガウンではなく、袖なしの使い捨てのプラスチック製エプロンを使用していたことが挙げられる。観察したエピソードの半数以上で、聴診器などの医療器材の再使用前に消毒が行われていなかった。また、ポータブル便器を別の患者に使用する際の完全な洗浄も不十分であった。内外の感染制御ガイドラインの全般的な遵守状況は良好であったが、改善を要する点もいくつか認められた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
血液・体液の飛散が予想される際には、眼や体を防護する個人防護具(PPE)を着用するのが標準予防策であるが、体の防護として袖なしエプロンを使用する実践手技は日本でも広く行われている。理想的には長袖ガウンがよいが、エプロンと長袖ガウンの価格差(通常数倍以上)を考えると、そう簡単に長袖ガウンを標準とするわけにもいかないというのが多くの施設での実情であろう。アメリカなどのエプロンがそもそも存在しない文化と異なり、香港では日本と同様にエプロンが使われていることに親しみを感じさせられる論文であるが、これが経済的理由によるものかどうかは一切考察されておらず、若干不満に感じる。

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