集団発生の早期特定と一連の標準的介入によるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の減少★★
Reducing Clostridium difficile through early identification of clusters and the use of a standardised set of interventions
K.J. Hardy*, S. Gossain, D. Thomlinson, D.G. Pillay, P.M. Hawkey
*West Midlands Public Health Laboratory, Heart of England NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 277-281
近年、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染率が世界的に上昇しており、英国でも複数の大規模なアウトブレイクが発生している。英国保健省の新たなガイダンスでは、C. difficile感染症発生率上昇期※の調査法について述べており、職員への周知、分離株のリボタイピング、清掃の強化、抗菌薬処方の監査・モニタリングなどに言及している。本研究の目的は、一連の標準的手法を用いることによって、18か月間にわたり急性期病院のC. difficile感染症発生率を制御できるかどうかを判定することである。研究期間中、439例が関与した合計102件の発生率上昇期を調査対象とした。1か月あたりの発生率上昇期の件数は、2008年2月の14件から2009年6月の1件の範囲であった。分離株のリボタイピングは、2008年1月から9月までは10例以上の患者が関与した発生率上昇期のみで実施していたが、2008年10月以降はすべての発生率上昇期に行った。2008年10月から2009年6月に、21病棟の28件の発生率上昇期の調査を実施したが、このうち7病棟では2件の発生率上昇期がみられた。分離株のリボタイピングにより、これらのうち9件(32%)がアウトブレイクであること、これらのアウトブレイクの3件はリボタイプ027、2件はリボタイプ078、その他はいずれも異なるリボタイプによるものであることが確認された。一連の標準的介入の結果、発生率上昇期の件数および感染患者数が減少した。一連の標準的手段による早急な措置を取ることによって、C. difficile病院感染症発生率の低下を図ることが可能である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
英国では、我が国では稀な二元毒素(binary toxin)を産生する強毒型株が拡大を見せており、MRSAと並んで感染対策の最優先ターゲットとなっている。CDIの予防策については、長らく明確なガイドラインが出てこなかったが、現在もガイダンスにとどまっている。エビデンスが不足していることもあろうが、早期に対策が確立することを期待している。
監訳者注:
※発生率上昇期間(period of increased incidence):本論文では、入院から48時間以降のC. difficile感染症発生例が、1週間を単位として28日以内に2例以上認められた病棟を、発生率上昇期間の状態であると定義している。
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