新しい実験データに基づく再利用可能屎尿容器の熱消毒に関する現行の推奨A0値の再評価★

2010.05.30

Re-evaluation of current A0 value recommendations for thermal disinfection of reusable human waste containers based on new experimental data


M. Diab-Elschahawi*, U. Furnkranz, A. Blacky, N. Bachhofner, W. Koller
*Medical University of Vienna, Austria
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 62窶・5
再利用可能な医療器具の正しい洗浄および消毒に関する問題は、現場の感染制御チームにとって非常に大きな懸案事項である。この研究では、院内感染に関係する2種類の重要な微生物、腸球菌属(Enterococcus spp.)および枯草菌(Bacillus subtilis)(クロストリジウム・ディフィシル[Clostridium difficile]の代替)芽胞の耐熱性を検討した。A0コンセプト(EN ISO 15883-1)に基づいた湿熱消毒は、病院環境での屎尿容器の消毒法として最も一般的な方法である。この研究の目的は、上記の微生物の不活化に関するA0コンセプトを詳細に検討して、その障害となり得るものを探索することである。実験はリン酸緩衝生理食塩液、人工的汚染懸濁液、および人工的乾燥汚染を使用した。人工的汚染は便器の不十分な洗浄状態をシミュレートするために用いた。微生物を異なる温度と時間で処理した。その結果、汚染は熱から微生物を保護し、乾燥汚染ではおそらく断熱作用によりこの効果が高くなることが示された。今回の研究結果は、便器の消毒にA0値60を用いる一般的推奨を支持するものではないが、予想される微生物負荷量に応じて戦略を変更することの根拠となる。著者らは栄養型細菌に対する消毒手順としてA0値180以上を推奨する。また、熱処理による消毒の前に、汚染した屎尿容器を完全に洗浄することの重要性が明確に示されたことから、汚染便器を長時間にわたって放置して乾燥させてしまわないことが特に重要であることを強調したい。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
A0値とは熱水消毒のレベルを評価するための国際基準であり、A0値60は70℃ 10分間あるいは80℃ 1分間、A0値600は80℃ 10分間に相当する。適切な医療器具の洗浄・消毒のために、汚染を長時間にわたって放置しない、洗浄で汚染を除去してから消毒する、というのは基本中の基本である。

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