抗菌薬耐性グラム陰性菌の出現に対する全病院的な不均一な抗菌薬使用プログラムの影響★
Impact of a hospital-wide programme of heterogeneous antibiotic use on the development of antibiotic-resistant Gram-negative bacteria
Y. Takesue*, K. Nakajima, K. Ichiki, M. Ishihara, Y. Wada, Y. Takahashi, T. Tsuchida, H. Ikeuchi
*Hyogo College of Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 28窶・2
抗菌薬耐性の出現を制御するための戦略として系統の異なる抗菌薬の使用が提案されているが、この考え方を検証するために実施された臨床試験はほとんどない。本論文では、耐性グラム陰性桿菌による感染症の減少を目的とした、全病院的な異系統の抗菌薬使用戦略を評価した。2006年9月から2008年2月にかけて、「定期的な抗菌薬のモニタリングと管理(periodic antimicrobial monitoring and supervision;PAMS)」と称する戦略を実施した。18か月の介入期間(6か月ごとに第1期~第3期)を、介入前の18か月(感染制御部設立前の12か月と準備期間6か月)と比較した。PAMS実施中は3か月ごとに、先行する期の抗各菌薬の相対的使用量およびこれらの抗菌薬に対する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の耐性率に基づいて、より強力な耐性を有するグラム陰性桿菌に有効な抗菌薬の分類(推奨する薬剤、制限する薬剤、および管理外の薬剤)を修正した。抗菌薬を5系統に分類し、4名の専任職員がその使用を管理した。異系統の抗菌薬の使用の程度(抗菌薬使用のばらつき)を推計するために、Peterson指数(AHI)を使用した。AHI推計値は、感染制御部設立前0.66および準備期間0.74であったが、PAMS導入後は上昇した(第1期0.84、第2期0.94、第3期0.88)。耐性グラム陰性桿菌の検出率は有意に低下し(P < 0.001)、多剤耐性グラム陰性桿菌の検出率も1.7%から0.5%に低下した(P < 0.001)。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌発生率には有意差は認められなかった。PAMS第2期には緑膿菌のイミペネム耐性率が改善した。PAMSの実施により、病院全体で不均一な抗菌薬の使用が進み、これに伴い耐性グラム陰性桿菌発生率が低下した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
耐性菌を生みにくくする可能性のある投与方法がいくつか考案されてきた。選択圧を高めないために、ランダムな抗菌薬療法を試みる動きもあり今後注目される。
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