NHSダイレクトへの嘔吐の報告は病院におけるノロウイルスアウトブレイクの早期警告に利用できる
Vomiting calls to NHS Direct provide an early warning of norovirus outbreaks in hospitals
P. Loveridge*, D. Cooper, A.J. Elliot, J. Harris, J. Gray, S. Large, M. Regan, G.E. Smith, B. Lopman
*Health Protection Agency West Midlands, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 385-393
ノロウイルスの活動は例年、冬季にピークを迎え、学校や病院などの施設に影響を及ぼす。ノロウイルスに対する従来の検査室情報およびアウトブレイクサーベイランスシステムは、報告が遅くなる場合が多いため、地域での活動を迅速に把握するサインとして用いるには不十分である。国民保健サービス(NHS)の電話サービスであるNHSダイレクト(NHS Direct)への報告を、公衆衛生上の目的で早期警告を発するために利用できる可能性がある。NHSダイレクトへの嘔吐の報告が、ノロウイルスの活動に対する信頼できる指標として利用できるかどうか、またその場合は報告数の増加が病院アウトブレイクの流行の前兆となるかどうかについて調査した。ノロウイルスの流行シーズンを規定するための参照標準として、検査室報告を用いた。2004年から2008年に、シーズン開始を予測する最良の指標を特定するため、NHSダイレクト報告データの4種類のデータ系列を健康保護局感染センター(Health Protection Agency Centre for Infections)が有する検査室データと比較した。4種類の系列データは以下のとおりである。(1)「非ロタウイルス性」胃腸炎と推定される報告の比率をモデル化し抽出、(2)5歳未満の小児の週別嘔吐報告数の平均比率、(3)全年齢の週別嘔吐報告数の平均比率、および(4)嘔吐報告データの増減の勾配。NHSダイレクトへの全年齢の嘔吐報告が2週連続して全報告の4%以上であった場合に警告を発し、最大4週先にノロウイルス流行が迫っているとの事前警告を医療施設に対し提供すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
NHSダイレクトは、医療機関から自発的に症状のある患者を報告する症候群サーベイランスシステムである。これによる正確な感染症発生監視は困難であるが、流行の早期検知などには有用であると考えられており、本論文はNHSダイレクトのさらなる有効活用の方法を示唆するものである。
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