クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の医療コスト:システマティックレビュー★

2010.04.11

Economic healthcare costs of Clostridium difficile infection: a systematic review


S.S. Ghantoji*, K. Sail, D.R. Lairson, H.L. DuPont, K.W. Garey
*University of Texas School of Public Health, Texas, USA
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 309-318
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染は、入院患者の感染性の下痢症の最多の原因である。C. difficile感染症によって入院期間の延長、再入院、臨床検査、および投薬が必要となるため、患者の医療費は増加する。しかし、医療制度の中でのC. difficile感染症のコストについては明らかではない。この研究の目的は、C. difficile感染症の医療コストを明らかにすることを目的とした現在入手可能な研究についてのシステマティックレビューを行い、その概要をまとめることである。C. difficile感染症関連コストを調査した研究のピアレビュー論文(1980年から現在まで)の検索を実施した。13報の研究が選択基準・除外基準に合致した。C. difficile感染症関連コストを、消費者物価指数を用いて2008年の米ドルに換算して算出した。C. difficile感染症の初発症例と再発症例の総コストおよび増分コストを推計した。13報の研究のうち10報は米国からのもので、残りはカナダ、英国、アイルランドが1報ずつであった。米国の研究ではC. difficile感染症1例あたりの増分コストは初発症例で推計2,871から4,846ドル、再発症例で13,655から18,067ドルであった。特定の集団(過敏性腸疾患症例、外科入院症例、および集中治療室で治療を受けた症例)を対象とした米国の研究では、増分コストは6,242から90,664ドルであった。米国以外の研究で示されたC. difficile感染症1例あたりの推計増分コストは初発症例で5,243から8,570ドル、再発症例で13,655ドルであった。C. difficile感染症の医療コストは、初発症例と再発症例のいずれも高価であった。C. difficile感染症関連コストは高額であるため、その予防・制御のために資源を投入するのが妥当である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
わが国における医療施設関連感染症に関連した過剰コストについての国際的な論文は乏しい。原因として、圧倒的なマンパワーの違い(劣勢)と、財務担当者によるデータ解析に基づくコストカット圧力が希薄であることが挙げられる。マンパワーの問題については、電子カルテ化の普及によりデータウェアハウスが利用できるようになれば、臨床データベースから医療費を割り出すことなどが比較的容易になると予測される。本格的なコスト解析の研究が望まれている。

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