英国の獣医師および感染したペットの飼い主に認められたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)保菌:新しいリスク群★
Meticillin-resistant Staphylococcus aureus carriage in UK veterinary staff and owners of infected pets: new risk groups
A. Loeffler*, D.U. Pfeiffer, D.H. Lloyd, H. Smith, R. Soares-Magalhaes, J.A. Lindsay
*Royal Veterinary College, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 282-288
入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の鼻腔内保菌は、その後の感染の最も重要なリスク因子の1つである。感染制御プログラムを成功させるためには、MRSA保菌の高リスク群の特定が極めて重要である。獣医師はこうしたリスク群の1種であると考えられるが、ペットの飼い主について、および感染したペットとの接触の重要性については明らかにされていない。2005年から2008年にかけて、英国全域で犬と猫のMRSA感染のリスク因子を調査した症例対照研究の一環として、MRSAに感染したペット106匹およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)に感染したペット91匹と接触した獣医師および飼い主608名を対象に、黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌のスクリーニングを実施した。臨床検査室での分離および特性評価として、食塩ブロスでの増菌培養、標準微生物検査と自動微生物検査、黄色ブドウ球菌に特異的なサーモヌクレアーゼ遺伝子(nuc)およびmecAの検出、およびPCR法による系統解析を行った。MRSA保菌率は、MRSAに感染した動物を診療した獣医師12.3%、飼い主7.5%であった。対照群であるMSSAに感染した動物では、MRSAの保菌は獣医師の4.8%にみられたが、飼い主には認められなかった。獣医師は飼い主よりもMRSA保菌率が高かった(オッズ比2.33、95%信頼区間1.10~4.93)。ヒトから採取したすべてのMRSAと、1頭を除く動物から採取したすべてのMRSAは、英国の病院感染型MRSAに典型的なCC22またはCC30であった。本研究により、小動物獣医師には職業的なMRSA保菌リスクが存在することが初めて示された。獣医師およびMRSAに感染したペットの飼い主は、病院と直接的な関連がない場合であってもMRSA保菌の高リスク群である。MRSA感染の悪循環を断つための戦略では、これらの新たな潜在的リザーバを考慮しなければならない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
動物が耐性菌の運び屋となることは既知の事実である。ことに市中獲得型化したMRSAの運び屋として、愛玩動物の疫学は今後重要となる。
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