擦式アルコール手指消毒製剤の使用によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)への影響:文献の解析★★

2010.03.31

Impact of alcohol hand-rub use on meticillin-resistant Staphylococcus aureus: an analysis of the literature


S. Sroka*, P. Gastmeier, E. Meyer
*Charite University Medicine Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 204-211
この総説の目的はアルコール手指消毒の影響を評価することであり、擦式アルコール手指消毒製剤(監訳者注:擦式アルコール手指消毒製剤消費量)を遵守の代用パラメータとして、あるいは遵守行動が病院の環境におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の状態に及ぼす結果を観察した。「手指衛生」、「遵守」、「消毒」、「時系列分析」のキーワードを「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌/MRSA」と組み合わせてMedlineを検索した。擦式アルコール手指消毒製剤の正確な使用数またはアルコール手指消毒の遵守状況の観察結果、および病院内のMRSAの状態を経時的に報告している研究のデータのみを使用した。文献検索で272件がヒットして、その12件の研究が適格基準に合致した。擦式アルコール製剤の使用量は、介入研究の開始時ではのべ患者・日数あたり3 mLから78 mLであったが、終了時はのべ患者・日数あたり12 mLから103 mLに増加した。手指消毒の遵守率は、開始時20%から64%の範囲、終了時は42%から71%であった。擦式アルコール手指消毒製剤使用量の増加とMRSAの状態の改善との間に有意な相関がみられた(r = 0.78)が、遵守とMRSAの状態との間に相関はなかった。擦式アルコール手指消毒製剤の使用量の増加はMRSA検出率の有意な減少と関連していた。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手指衛生は最も基本的な感染対策ではあるが、現場における実践(アドヒアランス)・遵守(コンプライアンス)は困難である。しかし、手指衛生を改善すると病院環境におけるMRSAの状況は改善する科学的根拠が示されており、特にMRSAが多く、個床病室が少ない、わが国の医療環境においては手指衛生の重要性は一層に認識されるべきである。

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