基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌★

2009.12.31

Extended-spectrum β-lactamase-producing organisms


M.E. Falagas*, D.E. Karageorgopoulos
*Alfa Institute of Biomedical Sciences, Greece
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 345-354
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)は広域スペクトルのセファロスポリン系抗菌薬を加水分解し、クラブラン酸により阻害され、腸内細菌科細菌に広く認められる。特に大腸菌(Escherichia coli)による市中感染症では、ESBLの流行型としてはCTX-M型酵素がSHV型およびTEM型酵素に取って代わりつつある。これらが関与する感染症候群にはまず尿路感染症が挙げられ、次いで血流感染症と腹腔内感染症であり、重篤化して入院を要することもある。罹患患者は一般に種々のリスク因子を有している。ESBLは院内感染菌にも観察される。いくつかの国々では、腸内細菌科の院内感染菌分離株、特に肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)におけるESBLの発現率が大幅に上昇している。院内におけるこれらの感染の疫学は複雑である場合が多く、局所的なアウトブレイクを引き起こす複数のクローン株が孤発性のクローン株と共存していることがある。これらに対する感染予防策は、無生物環境、病院職員、および医療機器を介する患者間伝播の減少に焦点を当てるべきである。抗菌薬の賢明な使用も重要である。ESBLによる薬剤耐性のほかに、セファマイシン系、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、およびトリメトプリム・スルファメトキサゾールなどの様々な種類の抗菌薬に対する共耐性が高頻度に観察されるため、ESBL産生菌感染の治療選択肢は限られている。ESBL産生菌感染に対する種々のレジメンの有効性に関する臨床データも少ない。一部のセファロスポリン系抗菌薬はin vitroで活性を示すようであるが、その臨床転帰は最善ではないことが多い。β-ラクタム薬とβ-ラクタマーゼ阻害薬の併用が有効である可能性があるが、これを支持するエビデンスは弱い。カルバペネム系抗菌薬は治療選択肢とみなされており、重篤な感染にはフルオロキノロン系抗菌薬よりも有効であると考えられる。チゲサイクリン(監訳者注:本邦未承認)およびポリミキシン系抗菌薬のESBL産生腸内細菌科細菌に対する抗菌活性はかなり大きく、ホスホマイシンとともにさらなる評価が求められている。
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監訳者コメント:
この講演でも、医療従事者を介した直接的伝播経路および環境リザーバを含めた間接的伝播経路の制御を行うことが、より重要であると述べている。

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